moonlight shadow~悪魔の誤算~

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「高リスクで重労働…か」 人間を順調にサキュバスにしていく中で、引っかかっている事があった 重労働と呼ばれた部分は、人間をサキュバスにしていく時点で身をもって痛感した けど、高リスクと言われた意味は、いまいちよくわからなかった リスクはすなわち危険で、人間を騙すときの危険性の事を言っているのかとも思ったが、いまいち腑に落ちずにいた もっとこう…何か…後戻りできない何かな気がするんだよな… それが何かまでが…あと少しで…答えが出そうなんだけど… そしてその答えが、今 自分が身をもって体験する事ではっきりと分かった 「にゃー…」 猫… 言葉を口にしたのに 完全に人間の言葉が口に出せなくなってしまった 「もう一つ教えてあげる 低俗悪魔の下にも、まだ階級はあってね… 低俗悪魔が、人間を低俗悪魔に変えていく上でのリスクとして 最終的には、犬や猫や虫ケラなど 知能が低く、人間の言葉を喋れない低俗悪魔以下になってしまうんだよ」 低俗悪魔以下… 「試練を積む…と言う言い方がよくなかったかな…? 人間を悪魔にすればするほど、人間と接触する機会が多いから、お前が人間だった時の記憶や思い出を持つ人間、所謂トリガーと出逢うきっかけも広がるわけだけど、その分リスクは上がる でも、そこまでしても人間に戻ろうと思ったわけだろう?」 それでも 猫の姿になってまでは望んでいなかった この手で 人間の手で… 秋に、触れたかったのに これじゃあ… この姿じゃあ… 俺だと 佐伯浩司(さえきこうじ)だと 秋にはわかってもらえない あっ…! 能力は? 能力は使えないのか?悪魔の時に薬を出せたり、ちょっとした小細工を出せた… ダメだ… 身体に力が入らない… 「低俗悪魔以下は、悪魔でもない 悪魔の時のようなちょっとした能力なども持てなくなる 身体が悪魔の姿から人間に変われなかったのは、悪魔としての魔力が、もうお前の中にほとんど残っていなかったってことなんだよ 今のお前は、人間界で飼われている猫と同じ だから、その姿のお前は悪魔の世界にも戻れなくなる 人間界で猫として生きていく これからは猫生の始まりってわけだ」 猫…生… それって これからは猫として、人生を歩むことになるって事なんだろ…? 人間界に戻れて 人間だった頃の自分の記憶もあって… だけど、身体は猫で… 秋は悪魔に成ってしまった… 絶望的だ 猫になったところで、俺は何が出来るって言うんだ 「愉快愉快… なんで… どうしてこう…馬鹿な人…うーん、悪魔を欺くのは面白いんだろうねえ… 恐怖や絶望に歪む顔、その顔を見るのがたまらなく快感だよ 人間の世界よりも、悪魔の世界の方が俺には向いてるなあ 悪魔の世界は 人を欺いても罪じゃないからねえ… 寧ろ誉だ 欺くほど、上位の悪魔になれる 第二の…いやあ… 第三かな…?の、人生 せいぜい楽しんでね」 男はそう言うと、月の方にまっすぐ飛んで見えなくなった
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