8人が本棚に入れています
本棚に追加
/54ページ
「高リスクで重労働…か」
人間を順調にサキュバスにしていく中で、引っかかっている事があった
重労働と呼ばれた部分は、人間をサキュバスにしていく時点で身をもって痛感した
けど、高リスクと言われた意味は、いまいちよくわからなかった
リスクはすなわち危険で、人間を騙すときの危険性の事を言っているのかとも思ったが、いまいち腑に落ちずにいた
もっとこう…何か…後戻りできない何かな気がするんだよな…
それが何かまでが…あと少しで…答えが出そうなんだけど…
そしてその答えが、今
自分が身をもって体験する事ではっきりと分かった
「にゃー…」
猫…
言葉を口にしたのに
完全に人間の言葉が口に出せなくなってしまった
「もう一つ教えてあげる
低俗悪魔の下にも、まだ階級はあってね…
低俗悪魔が、人間を低俗悪魔に変えていく上でのリスクとして
最終的には、犬や猫や虫ケラなど
知能が低く、人間の言葉を喋れない低俗悪魔以下になってしまうんだよ」
低俗悪魔以下…
「試練を積む…と言う言い方がよくなかったかな…?
人間を悪魔にすればするほど、人間と接触する機会が多いから、お前が人間だった時の記憶や思い出を持つ人間、所謂トリガーと出逢うきっかけも広がるわけだけど、その分リスクは上がる
でも、そこまでしても人間に戻ろうと思ったわけだろう?」
それでも
猫の姿になってまでは望んでいなかった
この手で
人間の手で…
秋に、触れたかったのに
これじゃあ…
この姿じゃあ…
俺だと
佐伯浩司(さえきこうじ)だと
秋にはわかってもらえない
あっ…!
能力は?
能力は使えないのか?悪魔の時に薬を出せたり、ちょっとした小細工を出せた…
ダメだ…
身体に力が入らない…
「低俗悪魔以下は、悪魔でもない
悪魔の時のようなちょっとした能力なども持てなくなる
身体が悪魔の姿から人間に変われなかったのは、悪魔としての魔力が、もうお前の中にほとんど残っていなかったってことなんだよ
今のお前は、人間界で飼われている猫と同じ
だから、その姿のお前は悪魔の世界にも戻れなくなる
人間界で猫として生きていく
これからは猫生の始まりってわけだ」
猫…生…
それって
これからは猫として、人生を歩むことになるって事なんだろ…?
人間界に戻れて
人間だった頃の自分の記憶もあって…
だけど、身体は猫で…
秋は悪魔に成ってしまった…
絶望的だ
猫になったところで、俺は何が出来るって言うんだ
「愉快愉快…
なんで…
どうしてこう…馬鹿な人…うーん、悪魔を欺くのは面白いんだろうねえ…
恐怖や絶望に歪む顔、その顔を見るのがたまらなく快感だよ
人間の世界よりも、悪魔の世界の方が俺には向いてるなあ
悪魔の世界は
人を欺いても罪じゃないからねえ…
寧ろ誉だ
欺くほど、上位の悪魔になれる
第二の…いやあ…
第三かな…?の、人生
せいぜい楽しんでね」
男はそう言うと、月の方にまっすぐ飛んで見えなくなった
最初のコメントを投稿しよう!