nightmare

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「あなた……なの?」 私は掠れた声で元彼の名前を言った 彼はまた不敵な笑みを浮かべて言う 「違うよ」 え… 違う…? じゃあ… 「じゃあ、あなたは誰?」 彼は薄い笑いを浮かべながら身体が代償なら答えるよ、と言った それはつまり、またあの薬を飲むという事なのか でもあの薬を飲んで、だんだん身体がつらくなっている これ以上飲んだら、身体が動かなくなってしまいそうな恐怖と不安が頭をよぎった 「薬はいいわ、身体はあげるから、教えて」 男の顔が曇る 「交渉決裂だね」 「えっ?」 「薬が必要ない人とは取引出来ないんだ」 なんで… 「…じゃあ、わかったわ、薬を飲む代わりに質問に答えてほしいの」 「契約成立だね」 彼はまたあの例のシャンパンを出してきた 錠剤をグラスに入れようとする彼の手を遮って、シャンパンを遠ざけると、私は食い気味に話しだす 私の意識があるうちに応えて貰わないと、また記憶がなくなってしまう 「あの薬を飲むと、夢に、その、前付き合ってた人が現れるの… それで、夢…だと思ってたんだけど、起きたら彼が付けていたペアのネックレスがあって あれは夢じゃなくて、現実なの? 現実なのだとしたら、彼は…」 「聞き分けのない女は嫌いだな」 「は?」 彼は私の顎を掴むと、私の口に自分の舌をねじ込んできた んっ…! 一瞬の事で身体を仰け反らすが、それより彼の力の方が強く、口元を離さない あっ… ただのキスじゃない、彼は自分の口の中に例の錠剤を仕込んでいた その欠片たちが、私の口に流れこんでくる 仕舞った 意識がどんどん遠のいてゆく
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