蝶々と飴

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心臓が止まるかと思った。 気がついて、恐る恐る目をあけたら、びっくりした。 私、残念な人の腕の中だった。 雷のあんまりの衝撃に、気が付かなかったけど、守るように抱きしめられていた。 「だ、だいじょぶ?」 「あ、ああ。はい」 慌てて、身体を離すと、まだまだ強い雨の音と次の雷の音が響いた。 何だったんだろう。 バス停、打たれた? 「す、っげー」 外を覗いた先輩が、声を上げた。 私も恐る恐るバス停の外の先輩の指さす方を見ると、すこし斜め向かい、100mほど先の杉の木がちょっと煙を上げている。 あそこに落ちたらしい。 「落ちましたね」 「うん。落ちた」 さすがに心臓がバクバクしている。 バス停に落ちなくてよかった。 あぁ、驚いた。 手が震える。 やばい。 怖かった。 「ははは、落ちましたねぇ、ハハハ。アハハ」 なんか、震えるし、怖いし、おもしろくなってきた。 先輩が変になっている私をみた。 へらへら震えて笑っている私に困ったような顔している。 「落ちたけど、大丈夫、な?」 ポケットに手を突っ込んで、何かと思ったら、ミント味ののど飴を取り出した。 「食べる?」 あははは。 残念な人に落ちた。 ―完―
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