蝶々と飴

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部活を終えて、下駄箱を出るともう空は暗かった。コレはもう来そう。 傘を持ってるし、夕立ちに迎えに来てくれるような親じゃない。 同じ部活の子にバイバイすると、自分の家の方へ足早に歩き出した。 校庭で運動部の子らがまだ片付けをしている。あの子ら、急がないと濡れちゃうな。 商店街を抜けた頃、雨が降り出して、傘をさした。 田舎の道を歩いて行く頃には土砂降りになる。あぁ、家につくまで待ってくれなかった。 歩く度に、靴が濡れる。 靴下まで、濡れてきたし。 遠くで雷も聞こえてきた。 1、2、3…… 稲妻までの秒数を数える。 空が一瞬、ぴかっと光る。 9秒。 音の速度と掛け算して、何キロ先か考える。 雨の匂いにちょっと浮かれていたのに、靴下の気持ち悪さと、落雷に、急に向田邦子の猿は台風の翌日死んでたな、と思いだしてしまった。 傘って、稲妻、落ちる? その辺の木の方が私の傘より高いから、平気? 木は木材。傘はスチール。 やばいかも。 一番近くの屋根付きのバス停へ逃げ込んだ。 通学路の誰も使わない古いバス停は、子供の落書きだらけだ。子供って、残酷。悪口がいっぱい書いてある。相合い傘なんて、古典的な落書きもある。それはまぁまぁ、可愛い。 バス停の角には蜘蛛の巣が張っている。苦手だから見ないようにするけれど、多分、中くらいの蜘蛛がいる。 雨脚が強くなって、道路に川ができる。 トタン屋根に響く雨の音を聞きながら、大粒の雨に跳ね上がる水が蝶々のように飛び回るのを見ていた。
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