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「あのさぁ」
「はい?」
顔を上げたら、その残念なイケメンが、こっちを見ている。
「あんた、傘、持ってんじゃん?」
傘持っているから、なんだって言うんだ。
先にココにいたのは、私だ。
なんか文句あんのか?
「はい。持ってますけど」
「使わんの?」
今、使えるような雨脚ではないと分からないのか?
雷が当たったら怖いと思ったという事は、この人に言うつもりはない。
「傘じゃ、この雨、無理だと思って」
「あ、ああ。そうか」
濡れた髪の毛をかきあげる。
あ、目、茶色い。
学生服のシャツがびったりと濡れて、細い肩に張り付いている。
お父さんがアメリカ人だっていう、この人は、背も高くって、茶髪で田舎の中学でかなり目立つ。
そのせいもあってか、残念な事にかっこ良くない方向にひん曲がっちゃっている。変な注目や期待を受けすぎると、人は捻くれちゃうんだろうか。
こないだも職員室から出て、いきなり廊下のゴミ箱を蹴っ飛ばしているのを目撃した。普通にしてればカッコいいのに、先生と喧嘩とか、思春期丸出しで本当に残念。
多分、こういう、私みたいな関係ない人の期待がうざいんだろうな。
それは、分かってるんだけど。
片思いでもなんでも、恋したいお年頃なのに、格好の餌食が、コレじゃ、なんか残念なんだもん。
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