蝶々と飴

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「蝶々、みたいじゃねえ?」 「え?」 あ。 おんなじ事、考えてた。 「あれ、水飛沫の感じ」 ちょっと道路を指差す。手が大きい。 「そうですね」 この人、そういう感性、あるのか。 雨の始まりのアスファルトの匂いが好きだとか、そういう事。 気恥ずかしくって、今更だれも言わないような、そんな事。 その瞬間、ゴロゴロっと雷の音が響いた。 一瞬、本能的に硬直する。 1,2,3…… パッと光った。 6秒。 ちょっと顔を見上げて、盗み見たら、半笑いだった。 あ。笑ってる。 口元を押さえたと思ったら、こっちを見た。 しまった。目が合った。慌てて目を逸らした。 私こそ、半笑いだった。変な奴だと思われる。 「飴、食べる?」 唐突に聞かれて、彼を見たら、子供っぽい甘いミルク味のキャンディーを手のひらの上に乗せていた。 「あ。いただきます」 包み紙の端っこを摘まんで、いただく。 雷で半笑いだったな、この人。 甘いミルク味が口に溶ける。 私の半笑いが加速する。 ゴロゴロ…… 雷の音が大きくなっている。 1,2,3 あたり一面が光に包まれた。 4秒。 近い。
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