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それからしばらくして、出来上がった雪だるまたちに人間のたましいがやってきました。
『これを君たちが作ったのか! 私にそっくり、ハンサムだ!』
「ぼうし付き」に入った魂は、カッコいいぼうしにたいそう喜びました。
『なんてカッコいいボタンだい! ありがとう、僕にぴったりさ!』
「ボタン付き」の雪だるまも、かっちり締まったボタンに大喜び。
その他にも、コントラバス、チェロ、トランペット……。
いろんな楽器の作った雪だるまに、人間たちのたましいがかえってきて、楽器たちと楽しそうに話しています。
「こないね、この雪だるまには」
けれど、ヴィオが作った雪だるまには誰もきませんでした。
これは年老いて雪だるまをつくれなかったオーボエじいさんの代わりに作ったので、人間がこなければオーボエじいさんが歌えません。
「弱ったなぁ」
ヴィオが弓でネックをさすります。
その時でした。
『待たせたのぉ、ヴィオ』
冬空から、ほとんど雪がふってくるのと同じはやさで人間のたましいがかえってきました。
ヴィオにはその声に、聞きおぼえがありました。
人間の入った雪だるまが、にっこりと笑います。
『よぉ壊されんで生きとったの。えらいぞ』
「おじいさん!」
ヴィオはとっさに抱きつきました。
つめたいはずの雪の体に、いつもヴィオを直してくれていたときのぬくもりがよみがえります。
手はないけれど、確かに抱きしめられているようでした。
「これでそろいましたかな、皆々様?」
楽しげに笑いながら、しゃらりしゃらりとオーボエじいさんがおりてきました。
みんながそろってうなずき、舞台に上がっていきます。
すっかり暗くなった空には、月がひょっこりと顔を覗かせています。
月の妖精たちは思ったよりたくさんの楽器たちを見て、わくわくした顔で席につきました。
さあ、コンサートのはじまりです。
演目は交響曲第九番、第四楽章「よろこびの歌」。
楽器たちが入場します。みなさん、盛大な拍手でお迎えください。
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