ナリカワリ

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僕はとてつもなくもどかしい日々を送っていた。 アオイがこの城にいる。なのに、会えない。これは思ったよりも苦しいことだった。もう城にいないと思っていた頃の方がまだマシだった。いるとわかっているのに会えないというのは、なかなかに辛い。 だけど、どうしようもなかった。情報通のハネズでも、アオイやアオイが仕える王子の居場所はわからないらしい。それぐらい、彼等は大事に守られているようだった。 アオイに会いたい。会いたい。会いたい。 そんなことを思いながら、僕は城の警備の仕事に打ち込んだ。この城にはアオイがいる。だったら、ここは守るべき場所だ。そう思いながら、僕は仕事に打ち込んだ。 そんな日々を送って、数ヵ月が経った。 病気だという王が、亡くなった。後継ぎはハネズが言っていたように、王の息子だという、アオイが仕えている王子になるらしい。 「お披露目は一週間後だ。」 「お披露目?」 亡くなった王の葬儀も盛大に行われ、何日か経った頃のことだ。いつものように仕事を終え、共同の部屋でハネズと茶を飲みながらのんびりしていると、彼は不意にそう言った。僕の返答に、彼はやはり呆れたようにため息を吐いた。 「次期国王のだよ。言っただろ。王子は姿を見せず、大事に守られて育てられる。王位を継ぐことになった時、初めて国民はもちろん、一般の臣下の前に姿を現す。それをお披露目っていって、一週間後にあるんだよ。」 「そうなんだ。」 「あぁ。...マジで、何にも知らないよな。」 ハネズはそう言って、またため息を吐いた。だけど、次の瞬間、彼は真剣な顔をして僕を見つめてきた。 「だったらさ、王子とアオイ様がただならぬ関係だっていうのも、知らないよな。」 「ただならぬ?」 「あぁ。...王子と従者を越えた爛れた関係ってことだ。それも、王子がアオイ様に強要しているらしい。」 それからハネズが語った内容に、僕は激昂した。それはアオイのことを馬鹿にして、ズタズタに踏みつけるような行為だった。なのにアオイは何もできない。アオイは、王子の側近だから。抵抗なんて、思い付きもしないのかもしれない。 「本当に、そんな奴が王になってもいいって思うか?」 「よくない。」 「だよな。...だったら、俺に協力してくれよ。」 ハネズの言葉に、僕は大きく頷いた。
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