おもいで どしゃぶり

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 昼食後テレビを見ていたら、突然バチバチと窓ガラスを打つ音。続いて表のアスファルトにザザーッと雨粒が跳ね返える音が聞こえてきた。  さっきまで太陽がギラギラと照りつけていたのに。  最近の夕立は随分荒々しいなあ。  通りからキャアキャア騒ぎながら走って行く声が聞こえた。  窓から見やると、手を繋いだ女の子がふたり、角を曲がって行った……。  あ、あの時・・・  小学校の一学期終業式の日だった。私は2年生、姉は4年生だったろうか。  姉と私は、学校から持ち帰る荷物を両手に提げて、家路に向かっていた。  「成績どうだった? 」  姉が探りをいれてきた。  「よくがんばりましたって書いてあったよ」  ホントのことはないしょ!  「おねえちゃんは? 」  と見上げたその時、  大粒の雨がポチッと頬に当たった。  「あ、雨だ!」  空を見上げたときには、もう顔にバシバシと当たる雨が痛かった。  「走ろう!」  姉が私の腕をつかんで走り出した。  どしゃぶりの中  私は必死で姉について走った。  家に着いたときには二人ともびしょ濡れ。  ワンピースが身体にはりついていた。  お互いの姿を見て大笑いした。  あのとき  気が付いたら姉は私の荷物を持ってくれていたんだったなぁ……。  姉が亡くなってもう半年以上が過ぎたんだね。  私、ずいぶん元気とりもどしたよ。  毎日の暮らしがあって、  家事もやらなくちゃだし、  パートの仕事も以前と同じようにやっている。  仲間と冗談を言い合って笑ったりも、してる。  それなのに……  とつぜん おとずれた  おもいでは どしゃぶり  (了)
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