散る桜 登る太陽

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壇上に上がり演台に立った照輝くんは子供ながらにその姿に貫禄を感じた 誰もが彼に目を奪われ注目されている 照輝くんはまっすぐ正面を向いて姿勢を正し 式場全体を見渡しているようだった こちら側を見たとき照輝くんの動きが止まった 目が合いしばし見つめ合った ごほんっ 咳払いが聞こえ意識がハッとして戻る 花枝さんが気付いて機転を利かしてくれたようだ もう一度前を向くと照輝くんは視線を外していて正面を向いていた そこから照輝くんの代表挨拶が始まった 高いけど変声期を終えた男の子特有の声ではっきりと聞きやす声で 演台から悠々とした態度で挨拶終えた 一歩下がり綺麗に一礼して壇上を降りて行った 花枝さんの時以上に拍手が大きくなぜか自分までも誇らしい気持ちになる 階段を降りるとき照輝くんがこちらを見ていて笑みを浮かべて目を合わせた だけど照輝くんはまっすぐ俺を見た後眉をひそめ視線をそらしぷいっとして席に戻っていった 怒らせちゃったかな? サプライズのつもりだったけど照輝くんにとっては知り合いにみられると恥ずかしく感じてしまったのかもしれない あとで謝らなきゃなと内心へこんでしまう 「ライオン丸人気だなーめっちゃ堂々としてたし小学生の皮を被ったライオンじゃねやっぱ?」 「照輝くんだからな名前。確かにすごいよね俺だったら緊張で声震える。小学生の皮を被った大人ならわかるけどライオンって…」 「テルっちねOKOK。そろそろ撮影再開っすからちょっくらいってくんよ待っててねハニー」 「はいいてらー」 妄言にはスルー南無南無 外国ではダーリンでもいいらしいとかなんとか性別で使い分けることでもないのかな 後でggろう そんなくだらないことを考えているうちに新入生挨拶が和やかに終わり 全員が起立し校歌斉唱をして式の終わりの言葉が述べられ入学式は閉会した 音楽が流れ司会の言葉通り退場する生徒たちを拍手で見送った この場に関係ない自分だが新生活への門出をみれてそして照輝くんの雄姿が見ることができ とても満足した気持ちだった ただ視界にちょこちょこ飛び跳ねた後東が視界にうつり邪魔だった なんでジャンプして撮影してるんだろう撮れるのかなぶれるでしょ普通 入場の時と逆で照輝くんたちが一番最初に退場していった 「お疲れさまでしたお二人とも」 「花枝さんこそお疲れさまでした。もうなんかお二人ともすごくて俺がなんか誇らしく感じちゃいましたよ」 「マジすごかったっすね!かっちょよかったっす!誇らしいっす!」 「なんできーくんが誇らしいんだよ」 俺は騒がしい東の頭に軽くチョップする む,無念…といって俺の肩に寄りかかってくる重い 「ふふ、楽しめたならよかったわ。私この後委員会の顔合わせと簡単な打ち合わせがるの。 あなたたちはどうします?馨さんは先におうちに戻って頂いてもいいけどもう少ししたらテル帰れるから待ってくれても好きなほうにして頂戴ね」 「…それじゃあ待ってみます。適当に時間つぶすので気にしないでください。何かあれば手伝いますので言ってください」 「わかりました。それじゃあ行ってくるわね。なるべく早く終わらせられるようにしてくるわ」 「かおるっちは俺に任せていってらっさいっす!」 俺にのしかかったままひらひらと手を振る東 それをみてくすくすお笑いながら去っていく 「戻らなくていいのきーくん」 「うんメインのカメラ父ちゃんに渡したし友達といるって言ってきたからもーまんたい!」 「…だから二人っきりにやっとなれたろ?かおるっち」 「そういえば先月貸した五百円返して」 「なぁぬぅ!!貴様わしを謀ったな!許さぬそこになおれぇ!」 「はよ返せ」 「すみません小遣いもらえるので来週まで待ってください」 「次遅れたら親父さんに連絡だからね」 「それはご勘弁をぉ~~。学校始まったら返すから!ちゃんと返しますから!先っちょだけだか!」 「最後のなんか違くないか?まぁいいけど。わかったよ」 「さんきゅーまいべすとふれんど!」 「うっさいから!ほら早く出るよ!迷惑になるだろ」 俺たちはそそくさと外へ出た 屋外の春風が頬を撫で髪をわずかに揺らす ずっと座ってたから解放感に一息つく パシャっとその時音が聞こえその音のほうに目を向けるとカメラを向けてニヤニヤしている東がいる 「なんで俺なんか撮ってるのやめてよ」 「いいじゃんいいじゃん。あ、そうだ」 すたすたと走って行って近場にいた男性に声をかけ連れてきていた 「どうしたの?」 「ちょうどいいし一緒に撮ってもらおうぜ!」 「な、なんでだよ俺ら場違いじゃん」 無関係なのに記念撮影みたいなのは恥ずかしい 「だってこの前撮れなかったっしょ?俺ちょー残念だったかんね!はいスマイルスマイル!」 東は式前にいた桜の木のとこまで引っ張って俺の肩に腕を乗せ肩組をした 向かい側にいる人のよさそうな男性がカメラを向けていた 仕方なく笑みを浮かべてカメラに目線を送る パシャ パシャ 離れた東が男性に近寄って写真を確認するとお礼を言って戻ってきた 俺も頭を下げてお礼を言った 「ねぇねぇめちゃよくね?やったぁうれしい!」 また肩を組んで跳ねてくる俺まで浮くからやめて恥ずかしい 「う、うん俺もうれしいうれしいけど落ち着いてステイステイ」 「わん!」 こいつ返事だけはいいな この前か 俺の入学式はこの前だった だけど家族が亡くなったことの処理と葬式などにより俺は出席しなかった 入学式の日も東はやってきてゲームしてなぜかお金を貸してやってそのお金でお菓子を買って食べていた 東はいつも通り何もかわらない中身のない話をして次お金返すからまたねって言って帰っていった それがきーくんなりの優しさだってわかっている 「……これ、俺も欲しい。後で送って」 「!…おう!何百枚でも送ってやんよ!印刷して額縁つけてあげるからちょー期待しててな!」 「そんなにいらないし、額縁もいらないから!」 漫才のようなやり取りにいつの間にか周囲の人から注目されていて恥ずかしくて東の頭に強めにチョップした 今度は普通に痛がっていた ぱたぱたと走る足音が聞こえ俺はそのほうに顔を向けた 綺麗な髪を揺らして急いできたのか少し息が早かった 彼はこちらを見つけると破顔して青い空色の瞳を大きく開いて目で見つめた 「照輝くん!」 「馨くん!」 俺の前まで走ってきて止まる だけどやっと会えた そんな気持ちがあふれてきて俺は照輝くんを抱きしめた 「わわわっ!」 「ははっ!照輝くんお疲れ様!すっごくかっこよかったよ」 少し離して見つめ頭を優しくなでた 照輝くんは耳と顔を赤くして慌て、撫でるとくすぐったそうに肩目を閉じて甘んじて撫でられている 「花枝さんもすごかったけど照輝くんすごい堂々として本当にすごかった!いっぱい練習したんだってね原稿用紙も持ってなかったし主役の子たちより目立っててなんか俺が誇らしくなっちゃったよ」 照輝くんは話を聞いてハッとしたが俺を見ると眉をしかめて顔をそむけた やっぱり怒ってたかな 「もしかして内緒で来たの怒ってる?嫌なことしてごめんね」 ちょっと悪戯心で距離感を間違えたかもしれないな 途端に申し訳なく感じる 離れようと手を離した そうしたら照輝くんは逆に手をつかみ握って俺を引き寄せた 今度はしっかり光を映す瞳で俺をうつす 「怒ってません!嫌なことされたなんてそんなことないです……。ただ、ちょっと驚いたのと、恥ずかしかっただけです。馨くんは悪く無いですむしろ、会えてうれしいです」 視線と一緒でまっすぐ俺に届いた偽りのない思い それにうれしく思い笑みを浮かべた なぜかまた顔と耳が赤くなっている自分でこんなに近づいてきたのに 俺から近づくと恥ずかしくなっちゃうのかな可愛いな パシャ ん? 「はぁ~公然猥褻なんちゃら罪!俺の目が黒いうちは浮気を許さんぜよ!」 あ忘れてた カメラを構えたまま泣きまねをして騒いでいるどこの坂本龍馬だ 「う……わ、き?う……きわ?」 なぜか照輝くんは茫然として呟いている浮き輪じゃないよ浮気でもないけど 「意味わかんないこと言わないでよてか言えてないしきーくん。正しくは公然猥褻物陳列罪だよそして罪は犯してないよ」 「そっかならしゃーねーお前ら二人とも俺が責任取って嫁に貰ってやんよ三食栄養バランスよく飯が食いたい肉多めで毎日みそ汁飲みたい俺戦争が終わったら結婚式するんだ」 「甲斐性なしは返却します何が言いたいかわかんないし無駄にフラグ立てないで」 東に付き合ってツッコんでると日が暮れてしまいそうだな 照輝くんを窺うとまだショートしているようでう……わきうきわ?きーくんはうきわ? と遠い世界に行ってしまっている 照輝くんと呼びかけ優しく頬をたたく プニプニだった ハッとして復活してくれたよかったー 「僕は何を…白昼夢…なのか」 難しい言葉を知っているね 「大丈夫だよちょっと変な人に絡まれただけだからね」 「…!それはいけません!警備の人を呼んできてください僕がここを守りますから!」 「年上の俺がそのセリフを言わなきゃだけど悔しいかな照輝くん似合いすぎてかっこいい」 「そんな…かっこいいなんて、当たり前のことしただけです」 「それでも俺だって照輝くんも守りたいよ。一緒にって約束したでしょ?」 「馨さん……それでも僕は、そうですね。でも絶対僕が守りますから!」 「照輝くん!」 「もう俺が悪かったからやめて!!ギブギブ!わるーござんした!遺憾の意!鬼は外!」 半泣きで無視していた東が騒ぎ出した何を言ってるかわからない 照輝くんは至って真面目だったが俺は途中からふざけていた …素面では無理だよ 顔がにやけるのをつねって阻止していた 「あなたはどちら様ですか?変な人なら大人の方を呼びますよ観念して下さい」 淡々と俺を背にかばい告げる 「よくぞ聞いてくれましたライオン丸!!俺っちは写真屋の息子であり影のダークヒーローあ「ただの友達だよ照輝くん騒いでごめんね」ほぁ!」 セリフを被せられしょげている知ったことか 「そうでしたか、お友達?なんですね変わった人です」 「なんで友達のところ疑問形なの?ライオン丸恐ろしい子!」 「先ほどからライオン丸って何ですか?僕のことなら即刻訂正してもらいたいんですけど」 「え?聞いちゃう感じ?いいねぇ!ほらこれここピカピカして立ってるからライオンみたいじゃねってかおるっちと言ってたもち俺が命名だかんね謝礼ならもらうぜ」 腰に手を当てドヤ顔で親指を立ててさらに白い歯を見せてポーズを決めて言う ……… 「こんなことは馨くんに言いたくはないですが、お友達は選んだほうがいいと思います」 「そうだねでも大丈夫。こうみえて変な奴だけど悪い奴ではないんだ。めんどくさいときは無視すればいいんだ」 「そうですか。…何か困ったらすぐ行ってくださいね僕頑張って追い払いますから」 「お前たちにしか見えないお化け扱いやめい!!」 大きな声で言って俺にしがみついてきた 「ちょっ!?何をしてるんですか!離れてください!」 「おっ!ライオン丸も参戦かまっけねーぞ!」 「ぐるじい」 三人でわいわいと騒いでいる 周囲の目が怖いてか苦しい 「馨くんが困ってます離してください!」 「これは照れてるだけだよなーこの恥ずかしがり屋さんめ♪ちゅ~~~!」 「や、やめろっていってるだろ!」 照輝くんは髪を逆立てて東の腹を蹴る 「ぬへっ」 「ハァハァ無事ですか馨くん」 「あ、うん平気」 おふざけが過ぎたかもしれない 「おーい、きーくん生きてる?」 …… 「そ、そこまで強くやってないつもりだったけど、大丈夫ですか?」 …… 「あの、その……」 照輝くんがあわあわしはじめた髪がペタンとしている連動しているのかな 「おーーい、今起きたらガムあげるよ?」 !! 「くれ!ちょーだい!」 「ステイステイ。おふざけが過ぎるぞ照輝くんが困っただろ謝罪を要求する」 「ごめんさい」 「その年になってもちゃんと謝れないのかおあずけステイだね」 「わん!くぅーーん」 犬としてはいい返事だ 「ほらちゃんと謝って」 「ライオン丸悪かったな!マブダチがとられたみたいでちょい寂しかっただけ。泣かなくていいぞほーらよしよしちょーかみやわらけーな!」 「や、やめてください!この、このぉ!」 東は照輝くんを抱きしめわしわしと髪をかき乱す それにあらがうがさすがの照輝くんでも防ぎきることができないようだった 「はいそこまでステイ!ほらガムあげるから」 照輝くんを奪い抱きしめてポケットからガムを取り出して東へ投げる それをうまくキャッチしてもぐもぐし始めた これでとりあえず一安心 そう思って胸に抱きしめたままの照輝くんを見る 猫みたいに髪がもふっと逆立っていて耳と顔が真っ赤だった 「だ、大丈夫?苦しかった?」 肩をつかんで軽く揺さぶると反応が戻った 「だ、だだ大丈夫ですはい」 照輝くんは自分の胸の前のシャツをつかみ呼吸を整えているそんなに苦しかったんだねごめんよ そして何とか場を落ち着かせた 「俺は東喜一!ピカピカの高校一年生だ。そしてかおるっちのマブダチ!よろしくなライ…テルっち!」 「…初めまして、白瀬照輝といいます小学六年生です。馨さんの、お友達です」 珍しく照輝くんの反応が悪い まぁうざいしなこいつ仕方ない丁寧に挨拶はできてるし偉いうん 「ほぉじゃ俺のお「ひどいぞぉー!テル!親友の俺を置いてくなんて薄情者だぁ!!」 東の言葉にかぶせられた大声の主がはんベソで近づいてきた 「あ、ごめん守」 「帰りの時間終わってダッシュなんて卑怯だぁ次は負けないからな!」 涙目でダッシュしてきたのか肩で息をして照輝くんを指さして責めている 「別に競争はしてないけど、善処するよ」 「うん!ぜんしょ?しろよな」 二人は笑顔で握手して仲直りしたようだ素晴らしい友情だ 平和でいいなぁ 「おい!俺っちを無視すんな!守空気読めよなまっじで!」 地団太を踏みながら騒ぐ 「あっ!兄ちゃん!兄ちゃんさっきのやめろよなでかい人が跳ねててデカバッタなんて呼ばれてて俺ちょー恥ずかしかった!まじありえねー!」 「はぁ?意味わかんねーから!ちゃんと写真撮ってただろ!守がこけそうだったところちゃーんと撮っといたぞ!」 とことこと東兄に近寄って脛を蹴った東弟 うがぁと叫んでしゃがんだあれは痛そう 「馬鹿イチ兄ちゃんなんか嫌いだ!このハゲ!」 「くっそーやったな馬鹿モル!チービ!」 「言ったな!変なツンツン頭!」 「ビビりチビ!」 「変な寝ぐせ馬鹿!」 「泣き虫チビ!」 「うぅ変な服ぅ」 「えっ…変?」 兄弟間の争いが苛烈になっていたがそろそろもういいだろ兄が泣いてしまう 「守落ち着いて。お前の兄ちゃん泣きそうだよ。僕も変だと思うけどさ」 「はいはい二人ともステイステイ。守も本当のこと言ったらダメだろ?」 「あっ!馨兄ちゃん!!わかったそうするへへ!」 満面の笑顔で笑ってくれた守 素直でいい子だすぐムキになって騒がしいけどね 東兄は学ランの上着の前を広げ変?変なの?と少し泣いている 正直ベルマークのロゴに愛は世界を救う…かもしれないと書かれている どこで買ったんだそれ 四人で外でワイワイと騒いでいる迷惑になってないといいけど でもこういった感じは久しぶりな気がする そんな昔のことでもないのになんでだろうね なんで……… クイッ 服の袖を引っ張られた 「ん?どうかしたの」 「ここの桜、綺麗ですよね」 照輝くんはこちらを見ていなかった 後ろにある一本の桜の木を見ていた その横顔からは何を考えているかはわからなかった 「…そうだね。いっぱい並んでいるのもいいけど、こうやって一本あるほうがしっかり見れてる気がするよ」 「はい。僕はどっちも好きですけど、なんだか思い出します」 「何を?」 照輝くんはこちらを向いた その表情は柔らかく穏やかだった 「公園の桜の木を思い出します。あそこの桜は僕にとって特別なんです」 「特別…?」 「はい。だって馨さんと出会えたんですから特別なんです。…変なこと言いますがとっても……綺麗だったんです」 そんな 俺だって 「特別だよ。人生で一番きれいな桜と、お日様に出会えたんだ」 「お日様…ですか?」 「そう…お日様みたいな男の子とね」 照れくさいこと言ってしまって恥ずかしくなる チラッと照輝くんを見ると彼も耳とほほが赤く染まっていた 「それならよかったです。馨くんが寂しくないように寒くないように、僕がそうなれたらって思います」 この子はまだ小さいのに 中身が大人びていてしっかりとしていて そして誰よりも優しく温かい心をもっているとそばにいると何度も感じた いや離れていてもだな 「ありがとう。照輝くん」 「こちらこそ、ありがとうございます。馨くん」 何が とは言わない そこに言葉はいらなかった ふわりと春風に飛ばされ舞う桜を見ながら俺たちは今確かに心は一つだった 「「なぁ!どっちが馬鹿だと思う!!」 後ろから東兄弟がまだ口喧嘩をしていてこっちに寄ってきた 「「どっともじゃないかな」」 そういって顔を見合わせ笑う 守はぽかんとしてきーくんはなぜか嬉しそうな顔をしていた 「そうだ。こっちきて照輝くん」 「はい」 照輝くんと手をつなぎ桜の前まで来て振り返り照輝くんの肩に体を寄せた 「カメラマン頼んだよ」 「!…お任せあれ!一億倍ちょーイケメンに撮ってやんよ」 「ほら、笑顔」 「は、はい」 「おらぁとるぞごらぁ!!」 どんな掛け声だよ 過去には戻れない 崩れて壊れたものは戻らない だけど きっとそれだけじゃない まだ俺は上を向いて歩くにはまだまだいろいろ足りない でも一緒に笑って 泣いて 手を握ってくれる人たちがいるから だからそんなに心配しないでね 後悔だけの人生はいやなんだ 俺はここで笑えてるよ 空は雲一つもない青空だった そのあとみんなで騒ぎながら写真を撮ったりしていた 花枝さんも合流して集合写真を撮った また大切なものが増えたよ 静かに桜の木は風に揺れていた 過ぎ去ったものは戻らないのかもしれない だけど無くなるばかりじゃない 春は出会いの季節ともいうのだから 《照輝side》 入学式が閉会した 僕たちはまた新入生を連れて退場しなければならない 退場の音楽と司会の人の合図で席を立った また向かい合い藤山君と手をつないで赤い絨毯を歩いた 気になったけど馨くんたちのほうを見ることはしなかった 藤山君は入場の時よりは滞りなく式が終わったおかげか顔色がいい そのまま外に出て待機する部屋に戻った 少しだけ肩の力を抜いて一息ついた そして新入生と高学年が揃って先生の言葉をきいて僕たち五、六年生は教室に戻れることになった 僕も戻ろうとしたが藤山君が何か言いたそうにしていたので少し待っていた チラッと何度かこちらを見てくるがなかなか言い出せないのか黙って手を握っている 「…どうかした夏織くん?気分悪かったりする?」 少ししゃがんで声をかけた 藤山君は少し落ち着いたのか声を発した 「今日はあ、ありがとう照輝くん」 「いえいえ、夏織くんが最後まで頑張ったからだよ」 藤山君の小さくて丸い頭を撫でる 黒いつやのある髪がまっすぐ流れている そこし顔を赤くしてはにかんでくれた 元気になったならよかったな 少しでも彼のためになったなら嬉しいな 「あの、また会えるかな……?」 「もちろん会えるよ。同じ学校でいつも来てるからね。会いに来てもいいかな?」 「う、うん!僕も会いに行きたい」 素直に喜んでくれる様子に嬉しくなる 年下の子の世話は慣れているほうだけど弟と書いたらこんな感じなのかな 兄弟にあこがれる気持ちはあったけどないものねだりだし 僕にはおばあちゃんがいる お兄ちゃん……馨くんがお兄ちゃんならいいなと思うけど なんだかお兄ちゃんという家族…みたいになれたらいいなって思う でも家族って何だろう おばあちゃんがいるけど僕の普通は普通じゃないみたい 大人の人がよくこちらをみてひそひそ話していることは知っている 子供だからって聞こえないわけじゃないし何もわからないってわけじゃない 低学年のころにはよくストレートになんで親がいないの?って聞かれた 僕はおばあちゃんがいる。だからさみしくない かわいそうなんかじゃない 僕らの家族を知らない人がかわいそうとか憐れんでいる様子は正直とても嫌だった でも僕は何も言わない ムキになったって何も得られない言わせたい人には言わせとけばいい 僕は平気 周りの話のネタにわざわざ追加するなんてしたくないから 「おーい!テル行こうぜー!みんないっちゃうぞー」 「ああ、今行くよ。それじゃあね夏織くん」 考え事をしながら撫で続けてしまっていた 簡単に手櫛で髪を整えてあげてバイバイと手を振って離れた 藤山くんは大人しく撫でられ続けていてふわふわとしていたがハッとして意識が戻ったみたい 「う、うん。またねばいばい…」 先に廊下に出ていた守と並び教室へと戻った 「はぁーつっかれたー!」 「マモなにもしてないじゃん」 「守ずっとそわそわしてたよな!漏らしてねーの?」 「漏らしてねーよ!ずっと座ってたから尻痛かったんだよあの椅子かたいし」 「ほんとかぁ」 「ほんとだよ!!」 教室に戻るとまだ担任の先生はいないのでじっとしていたみんなは教室で騒がしかった 僕は事前に指示されていた教卓の上にある複数のプリントを仕分けて枚数ごとに列の目の前の人に プリントを配布した それを終え全員に手渡されたら次の指示を伝える 「今配布されたプリントは保護者の方に必ず見せること。もう一枚は今月の行事予定なので確認をしてもらって もう一枚に名前を書いてもらって振替休日後に提出してくださいって先生が言ってたからみんなよろしくね」 教室からは各々がはーいと返事をしてプリントを鞄にしまっているようだ 「先生が戻る前に教室の掃除をしようか。教室は掃き掃除だけでいいらしいし、席の周りのゴミを拾って捨てておいてね」 はーーい 照輝を中心にそれぞれの役割をこなしていった このクラスは統率がなされていて正直担任の言葉より照輝のほうをみんな言うことを聞くクラスだったりする 「なぁなぁ昼めし食ったら校庭集まってサッカーしようぜ!」 「でも今日スポ少が使うって言ってなかった?」 「まじかじゃ駄菓子屋行ってから公園集合な」 「ねぇねぇうちで新しい猫がいるのみんな見に来る?」 「ほんとー!猫ちゃんみたい!あっ『きみとわたし』の新しい本出て買ったから持ってくね」 「うん!」 「さっきの入学式守の兄ちゃんすげぇ飛んで走ってたな!」 「知らねぇ!いつも騒いで俺まで怒られるんだ。なっ!テル?」 「…どっちもどっちだと思うけど」 「んなことねーし!」 あははははと教室ではおしゃべりで盛り上がっている 「お、みんな盛り上がってるなぁ。席ついてくださいね」 ガヤガヤとしていたが席を離れていた子たちは素早く席に戻った それを満足そうに見て先生は言った 「プリントも掃除も終わってるんだなみんな偉い!今日はお疲れさまでした。みんなの協力で素晴らしい式になりました。明日はお休みになったからゆっくり休んでくだい。この後の式場の片づけは先生たちと体育館でのクラブ活動の人たちで協力してやりますから忘れないように。春休みが終わったばかりだと言って遊んでばかりではいけませんよこれから春の行事とテストもあるし落ち着いた生活をして勉学に」 「先生長すぎーほかのクラスの子帰ってるよ!」 「そうだそうだ!」 教室中からブーイングが巻き起こった 本来ならいつもは照輝が率先して納めるが今回限りは照輝も同じ気持ちだ 気になって気になって仕方がない 守ほどではないがそわそわとして落ち着かない 先ほど見た光景に身内の祖母がいるのは最初から知っていたが なぜか最近気になっていつも考えているあの人がそこにいたから照輝は落ち着かない様子だった まだいるだろうか帰ってしまっただろうか 窓の外を眺め内心不安な気持ちになる 会えると思っていなかったから、会えたことに嬉しく思い今すぐ駆け出して彼のもとに向かって走り出したい気持ちだった 「そ、それもそうですね。それじゃあみなさん帰りきをつけて。委員長帰りのあいさつを」 「起立!礼!先生さようなら!」 「「「さようなら」」」 「はい、みなさんさようなら」 担任の小島先生が言い終えないうちに照輝はロッカーから鞄を背負い帽子をもって外へと早足で向かった 階段を降りるとき知り合いに声をかけられたがじゃあねやまたねといって過ぎ去った 三階からこの場所の階段はこの時間帯は陰になっていて暗い 照輝は己の体のポテンシャルをいかして素早く駆け降りる もう大人に見られたら叱られる速さで急ぐ 会いたい 急ぐ気持ちがこのあふれる気持ちが照輝を突き動かす 六年生の下駄箱まで着き靴を履き替え外に出る 校舎の暗さに慣れた目が一瞬外の明るさに目が眩む 片腕で光を遮り目を慣らす いた!! 眩しい光の中で柔らかな少し癖のある髪が春風に揺れている 後ろ姿で顔は見えないけどあの人だ学校に植えられた桜の木の中でポツンと一本だけ離れた場所にある木 そこは照輝が好きな場所でもあった 春の日差しとそよ風に舞う桜の花びらと儚く散る桜の木 それらを背景にして彼は立っていた 彼は振り返った まるでお互いに惹かれあうように視線が絡み合う 「照輝くん!」 「馨くん!」 僕は走り出して馨くんの前まで走って止まる やっと会えた そう思って馨くんを見上げたとき馨くんに抱きしめられた 「わわわっ!」 「ははっ照輝くんお疲れ様!すっごくかっこよかったよ」 ぎゅっと抱きしめられそういわれた 胸がきゅっと切なくなり同時に嬉しさが溢れ出す なんでだろう馨くんがいるだけで見えるだけで触れてもらえるだけで見てもらえるだけで こんなにも胸が苦しくて泣きたくなっちゃうんだろう いっぱいいっぱいで声が出ない出したらきっと僕は泣いちゃう それは嫌だ 我慢していると髪を撫でられ少し耳と首筋に指先が触れ痺れる くすぐったい様なもっとしてほしいような甘く苦しい思いを感じている ハッとして自力で意識を取り戻す 馨くんを見上げると不思議そうな顔をしていた つい恥ずかしくなって顔をそむけてしまった 顔が熱い 「もしかして内緒で来たの怒ってる?嫌なことしてごめんね」 ! 驚いてまた顔を馨くんのほうに向けると申し訳なさそうな悲しい顔をしていた そんな怒っているなんてありえない! 確かに最初は驚いたしなんでって焦ったけど馨くんに対してそんな感情はない 僕が怒ってると勘違いさせてこんな悲しそうな表情をさせるなんてダメだ! 馨くんは笑顔が一番なんだから 離された手を僕は手を伸ばし掴む そのまま近づきたくて引き寄せる 少し乱暴かなって思ったけど止まらなかった 気持ちが伝わってほしくてしっかりと視線を合わせて見つめる 「怒ってません!嫌なことされたなんてそんなことないです……。ただ、ちょっと驚いたのと、恥ずかしかっただけです。馨くんは悪く無いですむしろ、会えてうれしいです」 僕が気持ちを込めてそういうと驚いた表情から花が咲くような頬を桜色に染めて笑ってくれた その笑顔を見て僕はまた胸が苦しくなって走り出したくなる気持ちになった なんなんだこのどうしようもない気持ち 痛いような嬉しいような ずっと見ていたいのに全身が熱くて直視がつらくなってくる パシャッ ん? 今の音はカメラ? 「はぁ~公然猥褻なんちゃら罪!俺の目が黒いうちは浮気を許さんぜよ!」 黒い学ランを着崩してシャツから派手なTシャツがみえる図体のでかい変な男の人がいた その人はカメラを構え左右に揺れて泣きわめいている 何を言ってるんだこの人?なんちゃら罪?浮気?浮気ってあの浮気? 僕が浮気なんてするわけないしそもそもお付き合いしてる人はいない じゃあ誰と誰が浮気?この人は僕と馨くんの前で言っているから僕たちに対していっているのか? なら馨くんが浮気?そんなことはあり得ない!まだ知り合って短いけどそんなひどいことをするような人じゃないのは知っている あれ?ってことはこの変な人は馨くんとお付き合いしてるってこと? あれ?胸がすっごく痛い なんでだろ すっごくいやだ うわきはいけないこと おばあちゃんがいつも見ているドラマで言っていた 浮気はさいてーって 僕もそれはいけないことだとわかる でも、馨くんは 僕と ぼくの友達で 友達は…ずっと一緒にいれるの? ほっぺたにぺちぺちと触れる感触に僕は意識を戻した 馨くんが僕の顔を手で包んで覗いている ああ可愛いな 変な人は変でよくわからないけど、馨くんが恋人ならとっても幸せで毎日嬉しくて楽しいだろうな おばあちゃんが言ってた春が来たって言葉はまさにこのことを言うんだろうな あれ?でも僕がぐるぐる考えていたとき馨くん恋人は否定してる 僕の記憶が正しければ きっとそうに違いない! ああさっきは真っ暗な世界が輝いて見える 「僕は何を…白昼夢…なのか」 図書室で借りた小説にこんなセリフがあった まさか自分が使うとは思いもしなかったけど 馨くんは優しく変な人に絡まれてしまったという なんだと!それは許せない! 僕は湧き上がる正義感と馨くんを守るという熱い思いで背にかばい逃げてもらえるよう言った さすがに大きい人だ時間稼ぎくらいできないかもしれない 攻撃してはいけないところ主に男子編で聞いた股間を蹴り上げられるよう構える だけど馨くんは逃げてくれない困り顔だった早く逃げてくれ! 必死の言葉もなぜかかっこいいとかほめてもらった別にかっこつけようとか思ってないしでも……うれしい 問答しているとでかい変な人が変なことを言ってやめさせられた 知り合い…なのかな?なんで半泣きをしてるんだろうまだ蹴ってないよ とりあえず警戒は解かないで質問をしてみる 「あなたはどちら様ですか?変な人なら大人の方を呼びますよ観念して下さい」 僕の言葉を聞いて変な人はドヤ顔をして話してきたが馨くんが遮って説明してくれた お友達…らしい 恋人じゃなくてよかったそれなら全力で説得したよ 僕は嫌だし馨くんにはきっと…いややめよう なんで僕のことライオン丸っていうんだこの人 疑問を投げつけたら二人で命名したという 馨くんがこんなバカみたいな名前つけるわけないだろ! 僕はそう思い友達さんを睨み馨くんを見た なぜか馨くんには視線をそらされた 「こんなことは馨くんに言いたくはないですが、お友達は選んだほうがいいと思います」 「そうだねでも大丈夫。こうみえて変な奴だけど悪い奴ではないんだ。めんどくさいときは無視すればいいんだ」 「そうですか。…何か困ったらすぐ行ってくださいね僕頑張って追い払いますから」 僕は真摯にそう告げた そうしたらこのでかいだけのお友達さんが馨くんに抱き着いた な、なんとことを! 僕は怒りでいっぱいになり馨くんをデカいやつから解放しようとする だけど力が強いのか体格差で全く離れなかったこれ以上は馨くんが苦しくなってしまう なぜかデカいやつは僕まで抱きしめてきて髪の毛をわしわしとしてきた おばあちゃんや馨くんにしてもらうと気持ちいのにこのときはすっっっごくいやだった 「馨くんが困ってます離してください!」 「これは照れてるだけだよなーこの恥ずかしがり屋さんめ♪ちゅ~~~!」 「や、やめろっていってるだろ!」 馨くんに、ちゅ、ちゅーだなんて絶対ダメに決まっている!!! 暴力はだめよテル、まずは話し合いしてちゃんと相手がどんな人でどんな風に考えてるか知ってから分かり合えるのよ。それでもだめならテルが正しいって思うならやってしまいなさい時には拳で分からせるのも必要なの そうおばあちゃんはおじいちゃんの遺影を見ながら話してくれた 今がその時だよねおばあちゃん 僕が馨くんを守ってみせる!! ていっ! 照輝の見事な蹴り上げは同じ年ごろかその年代の子だったら致命傷の一撃だったが 東との体格差とたまたま馨にぶん殴られよろめいたおかげで急所には当たらなかったのだ 「ぬへっ」 「ハァハァ無事ですか馨くん」 「あ、うん平気」 馨くんは汚されなかったようだ 僕は達成感で胸がいっぱいになる やったよおばあちゃん 変なでかい人は地面に蹲っていた やりすぎちゃったかな 少しだけ罪悪感がわく 暴力には責任を背負わなくてはいけない 人として大事なことだとおそわった 僕が心配そうにしていたら馨くんが何やらこの人を犬のように扱った そしたら本当に犬のようにはしゃいで復活した なんだ犬なのか悪いことしちゃったかな 犬なら顔をなめたりするし でも馨くんには絶対しちゃだめ またライオン丸と呼ばれ髪をわしわしとされた 不愉快で手を伸ばして抵抗したけど無力だった こんな子供みたいに馨くんの前でされて悔しい そうしたら馨くんがガムを投げて助けられた 心配させてしまったようで情けなくなる 場を落ち着かせて互いに挨拶しようということになった 馨くんがそういうから従うけど僕は嫌だった こんなでかい犬っぽくて変な人 「俺は東喜一!ピカピカの高校一年生だ。そしてかおるっちのマブダチ!よろしくなライ…テルっち!」 「…初めまして、白瀬照輝といいます小学六年生です。馨さんの、お友達です」 挨拶は大事だからちゃんと言った 僕は馨くんのお友達だけどなんでだろうもやもやとした この人より下な感じがして馨くんを僕より知っているようで いやだった 「ほぉじゃ俺のお「ひどいぞぉー!テル!親友の俺を置いてくなんて薄情者だぁ!!」」 東さんの言葉にかぶせられた大声の主がはんベソで近づいてきた 「あ、ごめん守」 「帰りの時間終わってダッシュなんて卑怯だぁ次は負けないからな!」 教室に置いて来てしまった守だった いつも一緒に帰っていたので先に出て行ってしまったから怒っているようだった すぐ泣きべそをかく守はだいぶ怒って悲しかった様子 ちゃんと謝って手をつないで仲直りをした そうしていたら東さんが騒ぎ出した 随分と騒がしい人だな馨くんは物静かで朗らかなのに 話を聞いてみると二人は兄弟だと分かった いつも守の家に行っても兄のほうは部屋が別でいつも寝ているかゲームしているかで朝や放課後にあったことはなかった 確かに見た目も似ているし騒がしい まだ言い争いをしている 兄弟は依然うらやましいと少し思ったけど東兄は嫌だなと思う 騒がしいのは悪いわけじゃないけどさ 守が放った変な服発言がショックだったのか静かになった それに便乗して馨くんが追い打ちを放つ 少し胸がスカッとした 守と馨くんも知り合いだったみたいだ ……少しだけ嫉妬した 周りは集団から少しだけ離れた場所に僕たちはいる 騒がしいけど楽しい いつもと同じ場所なのに隣に馨くんがいるだけで気持ちが華やぐ そう思って見上げると馨くんは一本だけの桜を見ていた その横顔はここではないどこかを見ているようで僕はあの日の講演で見た馨くんと重なった 衝動的に僕は馨くんの服をつかんだ 「ん?どうかしたの」 「ここの桜、綺麗ですよね」 僕も桜の木を見ながら言った ひらひらと静かに舞い散る桜はきれいでどこか悲しみを感じた 横から馨くんの視線は感じたけど僕は顔の向きを変えなかった 今この時は馨くんと同じものを見ていたかった そのまま馨くんと二人で大事な話をした ほかの人には内緒の話だ 僕たちが静かに桜を見て話していると後ろのほうで騒いでいた二人の口喧嘩が終わったみたいだ そして手をつながれたまま桜の木に近寄って 撮影をしてもらった はじめて一緒に撮れたことがうれしかった 喜一さんが見せてくれたカメラで確認すると 綺麗な桜を背景に馨くんと僕が笑顔で写っていた なんだかそれがとっても嬉しくて暖かい気持ちになった おばあちゃんとも合流して一緒にみんなで撮影してもらった 僕にもきっと馨くんにも忘れられない一日だなと思った ここにいる僕たちに春が来たんだと今感じられた グウウゥ~~~ッ 変な人がお腹をすかせた音が鳴り響いた 「もう昼じゃん?はらへった!!」 「そうねぇ、じゃ皆さんでうちにいらっしゃい。御馳走するわよ」 「まじっすかやったー!ちょーうれしいぜかおるっちはやくいこうぜー!」 「少しは遠慮しろよなきーくん!本当にすみません花枝さん。俺手伝いますんでお願いします」 「兄ちゃんガムくってねー?ずっるーーーい!」 まだ騒がしいのは続きそうでつい笑みを浮かべる 「ほらどうしたの照輝くん、帰ろう?」 「…はい!一緒に帰りましょう」 みんなの後ろのほうで僕と馨くんは手をつないで僕の家へと並んで歩く 散った桜が後ろのほうで風に乗って舞い上がっていった
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