番外編 

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番外編 

【はじめてのはろうぃんぱーりぃ 前編】 葉は鮮やかな緑から色を変え 頬を染めたような赤や陽だまりの優しい黄色に色を 染めていた 日中暖かくて晴れ晴れした陽を浴び 稀に律の風が吹き薄着では肌寒く感じる日々が多くなってきた時期だった 「はろうぃん、ぱーてぃですか?」 シャリシャリと庭に散った葉を竹箒で掃いて集めている照輝くんはベージュのTシャツにモスグリーンのズボンを履いていた 自分は厚手のワイシャツにカーディガンを羽織って臙脂色のズボンを履いていた あー寒い 照輝くんは僅かに頬を寒さに赤く染めていても へっちゃらなのかテキパキと日課のお手伝いをしている 俺はそれのお手伝いで集めた葉を塵取りで集めて ゴミ袋に詰めていた 「そう。きーくん達がみんなでしようって言っててさ。毎年うちでやってたんだけど、今年はどうしようかなって思って」 事故から半年が過ぎても 時間は過ぎても 人は欠けた世界でも生きていかなければならない そのための何かは、きっと 「えっと、僕は大丈夫だと思います。多分、いえはろうぃんぱーてぃしてみたいです」 言い慣れないのか発音が棒読みで可愛い 東の名前が出た瞬間なぜか眉を寄せたがなんでだろう きーくんすぐ気に入ったもの揶揄うからなぁ今度注意しないと 「わかったよ。今年も賑やかそうだなぁ」 うーんお菓子は必要だとしてあと何かいるかな 騒ぐの大好ききーくんならハロウィン要素を盛り盛りにしてきそうだけど 例年は俺の家で、ケーキを買ってお母さんと一緒に作った唐揚げとエビチリとクリームシチュー、それとフルーツポンチにゼリーあとなんだっけ 弟はつまみ食いばかりででも飾り付けはいつも一緒にやって みんなで騒いで父さんが帰ってきたらピザを頼んで そんなことをしていたな 当たり前に過ごしていたから改めて思い出すと なんだか結構ハロウィン楽しんでいたな自分と思った 「馨くん?」 「ん?」 したから黄金色の少年がじっと青い瞳で見つめていた 秋になっても澄んだ秋空のような瞳で 今日も綺麗だなと思った 「それで、どんなことするんですか?」 竹箒を片付けて庭の枯れた葉を取ってくるくると軸を持って回した後袋に入れた 「美味しいの食べたり、ゲームしたり、お菓子食べたり?」 照輝くんはそれを聞いてへにゃっと笑った 「ははっ、なんだかいつもと変わりませんね」 たしかに なんだかんだ集まって食って遊んで寝ている これダメな奴じゃないか 少し反省しなきゃな 「そうだけど、ハロウィンはいつもと違うことするから変わるよ。うん」 ムキになって言う 八つ当たりではないはず 「違うこと……。はろうぃんとは…へぇ」 ささっとポケットからスマホを取り出して検索しているようだ 現代っ子め 「起源は豊穣を願った祭りで鎮魂祭の要素もあったんですね。それが時代と共に変化してお菓子を配ったり仮装したりするんですね。悪霊や災いを払ったり…じゃっくおーらんたん、カブの代わり、渋谷…デートで盛り上がる」 ふむふむと聞いていたけど最後のは余計な気がする なんでも検索なんてよくありません 俺の中の擬似花枝さんがお叱りになる ん… 静かに手を伸ばされる 視線を追いかけとりあえず少ししゃがむ 互いの距離が埋まり 体温が感じられるような錯覚がし 秋の匂いと照輝くんの落ち着く優しい香りが香る つい目を細めた 秋の風に揺れて光る髪があんまりにも綺麗で  なんだか泣きたくなった 「あ…ありがとう」 「いえ」 言葉少なく離れた 照輝くんは俺の頭に乗っていた銀杏の葉を陽に翳して くるくると回していた 光に触れた部分が白と黄色が混ざった光の色を反射して 眩しくて 照輝くんみたいだななんて思った たった半年とちょっとで 時間は流れて変化する それは良くも悪くもあって いつのまにか大きくなった背と肩幅 男らしい視線に 胸がざわついたのは 秋の嵐のようで 頬が熱くなったのは きっと 風が冷たかったせいだろう 「ささ、次は何すればいいのかな?」 話題を変えよう 「えっと次は、ガラス窓を拭きます」 「そっか、なら花枝さん帰ってくる前に終わらせちゃおうよ」 はいと綺麗な返事をした照輝くんはバケツを押し入れから持ってきて庭先の水道から水を汲んだ そして雑巾を二枚洗面台下にあると教わり用意した もうそろそろ暖房が恋しくなるねと話し もう朝方は冷え込むからおばあちゃんは灯油ストーブつけてますよと教えてくれた 朝から仕込みと掃除そして朝ごはん用意か 毎日大変だよなと思う 俺は乾燥機付き洗濯機にお任せし父がビンゴの景品を当てたと酔っ払って帰ってきた戦利品の動く某ロボット掃除機が頑張って床掃除をしてくれている 寒い時は気にせずエアコンをピッとつけている 地球温暖化?よくわかりませんね ピチャピチャと、絞った雑巾から水が滴る音がする いけないいけない 最近よく思考に夢中でぼうっとしてしまう 照輝くんはもう既に絞り終えていた 俺ももう一枚を取って雑巾を絞ろうとした 「これ使ってください」 「でもこれ照輝くん絞ったやつだよ」 「なのでつかってください」 それしか返答せず俺の手から雑巾を取って冷たい水に浸した 僅かにブクブクと泡が水面に現れて消える バシャっと取り出して手慣れた様子で雑巾を絞る なんだか男らしかった ……って何をしてるんだ俺は! 照輝くんはきっとバケツの水は冷たいから俺の代わりに雑巾を絞ってくれたんだ しかも気を遣わせないような態度をしてまで なんていい子なんだ もう一枚も絞り終えた照輝くんは固まっている俺を見て首を傾げた その手はいつもは綺麗な肌色が 赤くなっていた 「手、かして」 「え」 奪い取った雑巾はバケツの縁にかけた 水気はしっかりと絞れていた されるがままの照輝くんは何をするのか キョトンとした顔で俺を動きを見ている 俺は冷たくて赤くなった手を 俺の両手で包んだ 「…ッ!?か、馨くん!なにを」 顔まで赤くなった照輝くんは耳をピクピクさせて驚いている あ、耳まで赤くなった 相変わらず照れ屋で初心な照輝くんは面白くて可愛いな 「手冷えちゃったでしょ。こうするとあったかいから我慢してね」 「……はぃ」 消え入りそうな声で返事が聞こえた 水を弾く柔らかな でも骨はしっかり男の子の手で また、大きくなったんだなと感じた なんだかそれが 寂しいようで 嬉しくて 変に気持ちになった そう無言で思っていると 手を握り返された …… 赤みが取れた照輝くんの手が俺の手を優しい包む 俺の手は冷たくないよ 大丈夫 ありがとう 「ほら帰ってきちゃう前に終わらせちゃうぞ」 離す前にぎゅっと握り返して ニッと笑って立ち上がった しっかりと絞られた雑巾でガラス戸を拭く 普段から手入れされているからかそんなに手間はなかった 横でもう一枚のガラス戸を拭いている 伸ばした手は しっかりと上のはめ込まれたガラス戸に届いていた …雑巾絞りすぎで濡れ拭きにならないね ガラス越しの庭はさっきより 光を反射して光っているように見えた ≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫ 帰ってきた花枝さんにお掃除を終わらせたことを報告して二人で褒められた 雑巾を絞ろうとするたびに照輝くんがさっと代わりにやろうとするので 若干申し訳なさと手間を感じたのは内緒だ お友達の家で花をいけてきたと言って着替えると部屋に花枝さんは下がっていった 俺たちは静かに縁側に座って俺が淹れた緑茶を飲む 茶菓子は色とりどりの淡い色の小さな落雁で 小包の和紙を脱がせて口に含むと ふわっと解けて舌に優しい甘さが広がった それを味わいお茶を啜るととても美味しかった ほぉ 照輝くんも隣でピッタリくっついていて ご機嫌なのか足をぶらつかさせている 頭を撫でるとチラッと上目遣いで見てきたが すぐに正面を向き落雁の包みを剥がして口に含んだ 軒下にいる俺たちに 冷たい秋風が通り過ぎていった 「ふぅ、……こんな、もんかな?」 スマホでレシピサイトを覗きながら エプロンを着てキッチンに立っている 流し台には生地の素が入っていたボールとかき混ぜるための泡立て器があった 洗い物が面倒だなと思ったけど仕方ない とりあえず水につけておいた お菓子作りなんて久しぶりだな 今後ろではグォーーーンと動作音を奏でながらオーブンレンジが頑張ってくれている 甘い香りが部屋の中に漂っていた ピコンッ とりあえず先に焼いて冷まして置いやたつを上から撮る うん、なかなかの出来栄え いくつか割れちゃったりするのもあるけど デコレーションしたりすればいいんじゃないかな スーパーで買ったお菓子作り用の飾りが入った袋がキッチン台に置いてある 次の工程は…… 画面を覗いていたら通知が来た どれどれ… きーくんからか 喜一「やばくね?」 という一文と画像が添付されている やばくねって主語はどこにいったのよ 画像は…なんだろうこれ 黒いタイツ?真っ黒な体に顔と腹の一部に白い塗料が塗られている 画像の端で守が半泣きで写っていた 何をしているんだか、まぁどうせきーくんがアホなことしているんだろうけど そんなふうに思っているとまた通知が それはいとこと叔母からだった そちらはどうなのとかご飯食べているのかとか細々としたことが書かれていた いとこのほうはめんどくさいので後にしよう 小鍋でお湯が沸いたので急いで火を消して 小さな金属ボールにチョコをに入れて湯煎した 包丁で砕いたチョコがかき混ぜるたびに形を崩して液状になる チョコ独特の香りが漂ってきた 艶があって美味しそうだ 湯煎したチョコに生クリームを入れて混ぜる そしてグラニュー糖も少しづつ加える そしてまた残りの生クリームをいれて… グラニュー糖もいれて… うでがつりそう 電動どこにいっちゃったんだろう 以前母と一緒にケーキを作った時だから… 昨年の弟の誕生日の時にはあったはず 普通の白いバースデーケーキに果物を乗せ チョコペンでお誕生日おめでとうと書いたものを作った そしてみんなで夜お祝いをしたのだ 思春期の弟もそんときばかりは顔を赤くしてニヤニヤとしていた …… おっとチョコホイップクリームを混ぜ過ぎてしまった いけないいけない まぁ、美味しいし大丈夫かな… ピコンッ またなんかきたか どうせきーくんの変顔か守の泣き顔の写真か 親に叱られたのなんだのと愚痴をおくってきんだろうな 手の甲に跳ねたクリームを行儀悪く舐め取り お尻のポケットからスマホを取り出した なになに… 照輝「こんばんはです!突然ごめんなさい。ごはんは食べましたか?まだならおかずがあるので、うちにおいでとおばあちゃんが言ってます。僕は先に食べて部屋ではろうぃんの準備をしてます。明日は何時ごろならおうちにむかえにいっていいですか?よかったら教えてください」 丁寧な文に照輝くんらしくこちらを気遣ったないようだった 意外とハロウィンとかに浮かれちゃったりするのかな? ピコン… 照輝「月がきれいですよ馨くん」 シンプルな文に スマホで撮った丸い月の写真が送られてきた あの部屋の窓から撮ったのかな … キッチンからベランダに向かう ガラス越しに照輝くんの明かりのついた部屋と まぁるい満月が見えた スマホからLINEを開き文字を打つ 馨「月が綺麗ですね。こちらの月はまんまるです」 先程何枚か撮ったカボチャのカップケーキを上から撮ったやつを添付して送る そして、ガラス扉を開いて同じように月を撮った 同じ月をカメラで撮った それも追加でご飯は食べたよという文と共に送った すぐに既読になった すると一瞬影がチラついた 見上げると黄金色の頭がみえて そのあと照輝くんの顔が現れ下を向いて 俺と目があった 嬉しそうに笑みを浮かべて手を振ってきたので こちらも手を振りかえす ピコンッ 照輝「美味しそうなお月様ですね!!!僕もお菓子用意しました。でもお店で買ったやつです。お得用を買いなさいとおばあちゃんに言われました。」 画面を覗いていた顔をあげると照輝くんかお菓子の袋を持って振ってきた つい笑みが浮かぶ 馨「明日はいっぱい配るからね。それがいいかもしれないね。楽しみで眠れなくならないように早く寝なね」 ピコンッ 照輝「馨くんとはろうぃんができるのが楽しみです。ちゃんと寝ますよ。馨くんもはやく寝てくださいね。寒いので冷えないようにしておいてください」 ふふ、親みたいなこと言うなぁ ピコンッ 「はやく明日になってほしいです」 ピコンッ 「はやく馨くんにあいたいです」 文字の列を目で追い終えたとき 後ろでオーブンが焼き上がりの音を知らせた とりあえず… オーブンからカップケーキをとりだそう 既読をつけたままキッチンにもどる 決して無視じゃない そう 取り出して クリームを絞って カラフルなチョコをかけたりかぼちゃのおばけ風にデコレーションして カボチャのクリームは冷蔵庫に入っていて あ、洗い物をしなくちゃ … テレビもキッチンの明かり以外ついていないリビングのソファーに座って とりあえず 「俺もはやくあいたいよ。おやすみなさい照輝くん」 彼以外には絶対見せたくない本心を綴って スマホを握った手をソファーに預けながら 暗い部屋で俺は目を閉じた 時計の針の音と外から鈴虫の鳴き声が 聞こえてきた秋の一夜であった 続く
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