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「はぁっ、、は、、やぁっとついた〜!」
息を切らしながらライゼンデニアの入り口に立った少年、ラキ・オクトノエム。
痩せ身の体に平均的な身長、野暮ったい黒髪に鳶色の瞳、平凡という言葉がぴったりな少年である。
「ていうか、どうやってはいるんだここ…?」
目の前にそびえ立つのはライゼンデニアの重厚な門のみ。門番も窓口もない。ラキはとりあえず叫んでみることにした。
「すみませーん!!だれかいませんかぁ!!!門開けてくださーい!!!」
……返答なし。
「ですよねぇー、どうしようかなぁ」
とラキが困り果てたその時、ギィ…と音を立てて目の前の門が開いた。
「いや〜、ごめんね!寝坊しちゃって!!」
門を開けてくれたその人は、肩まで伸びたオレンジの髪に、ジャラジャラとついた貴金属類、何個もついたピアスという派手な見た目だが、そのチャラさが似合ってしまうぐらいの美形だった。
「君、ラキ・オクトノエム君であってる??」
「は、はい、そうです!」
「ようこそライゼンデニアへ〜、俺はシスラ・ジョガドール、君の案内人だよ、よろしくねぇ」
そう言って差し出されたシスラの手を、握り返す。
「ていうか君、門の開け方知らないの?この街の門は大体力流せば開くじゃん。」
シスラは小首を傾げて、不思議そうに尋ねる。
「え、そうなんですか?」
「え、そうだよ。なんだか汗ばんでるしまさかここの階段自力で登ってきたの??108段もあるのに?」
さらに不思議そうに問われて、思わずラキは身を引く。
「え、はい。」
「ええ〜、精霊使えばよかったじゃん、」
その言葉にラキの表情が一変した。
困惑に染まっていた瞳は真っ直ぐにシスラを捕らえる。
「お言葉ですけど、精霊は使われるものじゃありません。助けてくれる子たちです。自分が頑張れば済むことは自分ですべきです。」
シスラは毅然としたラキの姿に眼を見開くと、今までの派手な愛想笑いとは違う、柔らかな微笑みを浮かべた。
「君おもしろいねぇ、そんなこと言う人俺初めてだぁ。ね、俺のことはシスラって呼んで、敬語もいらないから。仲良くしてねぇ、ラキ。」
手を握られ、急に距離をつめてきたイケメンに圧倒される。
「よ、よろしく、シスラ。」
戸惑うラキをよそに、
「じゃあ、とりあえず理事長室行こっか!」
と握られた手をそのままにシスラが歩き出す。
「え、シスラ…!手!繋いだままだって、」
「うん、だって手繋ごうとしてるからー」
困惑するラキと反対にシスラは飄々と先へ行く。
「ええ…?いい年した男が手を繋ぐもんじゃないだろ…?」
「何言ってんのここじゃ普通だよー。だって男しかいないんだもん。」
「え!?」
「知らなかったの、?」
驚きに足を止めたラキに合わせてシスラも振り返ってラキを見る。
「全寮制なのは知ってたけど…、」
「そうそう、全寮制で中央の魔道場以外は壁で区切られてて完全男女別制。」
「お、俺の学園生活…。」
がっくりと肩を落としたラキの背中をシスラがポンと叩く。
「女なんかいなくても恋愛はできるよぉ?」
「え、どういうこと…?」
「男の巣窟といえどたまるもんはたまるじゃん?だからこの中で済ますしか無いんだよねぇ。」
「それってつまり…、」
「いえーす、男が恋愛対象の人間がうじゃうじゃいまーす。あ、ちなみにねぇ、俺はバイだよ〜。かわいこちゃんはいつでも大歓迎〜。」
思わずラキは頭を抱えた。
(母さん、ハルキさん、俺はこの学園でやっていけるんでしょうか…)
不安をぬぐって顔を上げるとシスラが眉を下げてこちらをみていた
「ラキ、もしかして偏見とかあった?
気持ち悪かった?」
「いやいや、全然。俺の村じゃ男同士の夫婦もいたし、普通だ。」
ラキは手を振って慌てて否定する。
「村?ラキってあの"オクトノエム家"でしょ?」
「あーっと、、、」
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