夕立と黒い傘

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 祈るように見上げた空は青く、蝉が喚くように鳴いている。  遠くに小さな白い雲が浮かんでいるが、なんとも頼りない。そもそも、目で追っていると、遠くへと流れて行っている。 「おねえちゃん、あめ、ふるの?」 「……うん。そらにおいのりしよう」  二人は庭先で胸の前に手を組むと目を閉じた。 「あついね、おねえちゃん」  夕方とはいえ、夏の暑さが容赦なく二人を包み込む。ぽたぽたと地面に落ちるのは汗か涙か、美夏の心は限界に達していた。  颯太も、もう限界と言わんばかりに眉間に皺を寄せている。  美夏は決断した。これ以上は危険だ。 「ごめんね颯太、もうかえろうか」 「おとうさん、いなくなっちゃうの?」 「……しかたないよ」  颯太はその場に座り込んでしまった。今にも泣きだしそうなくらい肩を震わせている。  とりあえず慰めて、家の中へ連れて行こうと、美夏は囁いた。 「ごめんね颯太。おうちにはいろう」 「……いやだ」  庭では、夏の暑さをヒマワリだけが喜んでいるようだった。  仕方ない。美夏は罪悪感を感じながらも颯太に言った。 「やくそくどおり、なんでもいうこときいてあげるから」 「いやだ」  美夏はぐずる颯太の様子に、どうしようもなくなって、口走ってしまった。 「わかった。おとうさんもなんとかするから、いえにかえろう」  颯太は「ほんとう?」と顔を輝かせて立ち上がった。
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