RPG

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RPG

「RPG?」 「はい。RPGに決まりました」 「RPGと言うのは、ええと、何のことですか?」 担任の神林先生が、黒板を見て顎をさすっている。 あまり詳しくないらしく言い淀んだ学級委員長の山田さんに、副委員長の僕は助け舟を出した。 「RPGはロールプレイングゲームの略です」 「ああ。ゲームですか」 「はい」 「どんなゲームなんですか?」 「一人一人が架空のキャラクターになって、目的に向かって行動します」 「ほお。面白そうですね」 神林先生は、定年を控えた白髪の国語の先生で、僕たちの担任。ゲームのことに詳しくないのは仕方がない。 「で。このRPGを来週のこのクラスのレクリエーションでやるわけですね」 3月になり中学三年生の僕たちのクラスは全員が進学先を決めた。和やかな雰囲気の中、午後のこのホームルームで僕たちは来週のクラスのレクリエーションの内容をみんなで話し合っていたのだった。 「提案したのは?誰ですか?」 「あ。八木です」 「八木君。やるのは構わない。でも、これ、どうやってやるんですかね?勿論学校だからゲーム機は持ち込めません」 「あ。はい」 八木に多くを求めてはならない。あいつはノリで口走っただけだ。しかし、その意見に悪乗りした男子及び一部の女子がいて、多数決でRPGに決まってしまった。決まってしまった以上、これをどうやるかみんなで話し合おうとしていたところに、席を外していた神林先生が戻ってきたのだった。 「あと、八木君、さっきなんか口走ってましたね。異世界ですか?」 「あ。はい。異世界転生」 「それは一体?」 「えっと。死んで別の者に生まれ変わって、別の世界に行って、それで、その、戦ったり」 「ははは。死なないと駄目ですか?君たち、まだこれからなのに勿体ない」 「ああ。それが、異世界転生なんで」 「生きたままでは?」 「それは、異世界転移っていいます」 「へえ。元犬みたいなものですかね。でも、それじゃ、異世界じゃないか」 「え?」 「なんでもありません。落語です。で、あれですか、これから内容を決めるんですよね、鼎君」 鼎と言うのは、僕の苗字だ。かなえ、と読む。 「これからみんなで内容を決めるんですが、意見が出なくて」 「ははは。必要ですよ、ブレインストーミング。安易な方に流れちゃいけません。窮すれば案ずる。せっかく面白いことになったんですから、みなさん本腰入れて考えてみましょうよ。何ができますかね。一人一人が架空のキャラクターになって戦うRPG。異世界転移」
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