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「やばいよ、あの家でピンポンダッシュは。」
「ここの家の雷オヤジ煩いし、この前他の奴がピンポンダッシュしたら、そいつの家に直に怒鳴り込んできたじゃねーか!!」
「だ・か・ら!!あえて、やるんだよ!!この家をターゲットにな。」
俺が小学校の頃だ。
俺と太郎は、やる気まんまんの晋二の無謀な悪戯に付き合わされていた。
「あった!!この家だ。」
ピンポーーーーーン!!
「あっ!いきなりチャイム押すなよ!!」
「まだ心の準備が出来てねーよ!!」
「こらーーーーーーーーっ!!また悪ガキかーーー!!」
家のチャイムに飛び出してきた雷オヤジが 家から飛び出して、俺らは仰天して走った。
「晋二は?!」
「えっ?!晋二!?もう向こうの方へ走ってるよ!!早えーよ!!」
俺らがダッシュする視界には、晋二は既に豆粒位に遠ざかっていた。
「雷オヤジが追いかけてくるよー!!」
「追い付かれたーーー!!」
俺と太郎は、雷オヤジに取っ捕まえられてこっぴどく怒られた。
「晋二、足早すぎるよ・・・」
「俺らあの雷オヤジにやられたよ・・・」
「あ、そう?はははは!!」
戻ってきた晋二は、自慢そうに平笑いしながら、俺と太郎の雷オヤジに叩かれてコブだらけの頭をグリグリと撫でた。
「よし!またやるぞ!!ピンポンダッシュ!!」
「えーー!!」「またーー!?」
そんな晋二は、運動会ではスターだった。
「よし行けーーー!!晋二!!」
クラス対抗リレーでは、常にアンカー。
晋二は俺から託されたバトンをふんだくるように受け取ると、目にも止まらぬ早さで先頭に立って、俺らのクラスを勝利に導いた。
「晋二!!よくやったーーー!!」
「晋二バンザーーーーイ!!」
やがて俺らは小学校を卒業して、中学校にあがった。
晋二は部活では陸上部に入った。
帰宅部の俺は、ちょくちょく晋二の部活を覗いてみた。
校庭の陸上トラックを、先輩をごぼう抜きしていく姿を何度も目にした。
「おお、純二か。お前も部活に入らないか?」
「え、遠慮します・・・」
晋二は、陸上部の選手としてこの中学校を何度と優勝に導いた。
中学校の卒業式。
「特待生か晋二。良かったじゃん。陸上で有名な高校に推薦されたんだって?」
「まあな。」
俺と晋二は、違う高校に進学してお互い離ればなれになった。
そして、この会話が晋二との最後の会話になった。
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