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星空を眺めるふたりに、沈黙が生まれる。
しばらくして、星那がそっと口を開いた。
「……あんなに遠く離れている織姫と彦星だって、一年に一回、会える。だから、生きてさえいれば、叶わないことなんてないと思うの」
となりで空を見つめる彼女の瞳に、星の光が映って見えた気がした。
どこか儚げで、希望を祈るような……瞳。
君のその瞳には、どんな未来が見えているんだろう。
「だから……、私たちの願い、叶うよ。きっと」
微笑む彼女に、俺も微笑み返す。
「……そうだな」
気がつくと、遠くで聞こえていた楽しげな音楽もピタリと止んでいた。
「帰ろっか」
「ああ」
増えた荷物に歩きづらそうにしている彼女から、射的の景品の箱を取り上げる。
「あ……ありがと」
その時、空いていた右手に、彼女の指が触れた。
思わず、となりを見る。彼女は天使のような優しい笑顔で、俺を見つめていた。
そのまま、彼女の小さな手が俺の手を握る。
よく考えたら、彼女と外で手を繋いだことがなかった。人目があるのが、なんとなく恥ずかしかった。
でも、今なら。
「ふふっ。ふふふふっ」
「……何を笑っている」
「だって……」
彼女の手をしっかりと握り返しながら、自分の顔が熱いことに気づく。
「家ではあんなに素直なのに……変なのって」
「うるさいぞ」
「ごめん。嬉しくて……。ふふっ」
「ついでに言うと……」
「何の『ついで』よ」
「……浴衣姿……綺麗だ」
星那は驚いたように俺を見た後、最高の笑顔を見せてくれる。
「ありがとう。私もついでに言うけどね……。アイラの浴衣姿、すごくカッコいいよ!」
こういうのを「幸せ」って言うのだろうか。
「『ついで』なのか……」
顔を逸らしながらも、口元が緩んでしまう自分がいた。
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