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王城へ着いたのは日暮時だった。
「おい、チコはどこにいるんだ?今すぐ、俺がデュランの所へ連れて行く。」
「この部屋にいるようにいっておいたんだが…」
「いないぞ。」
俺はドアの前にいる衛兵に聞いた。
「今日この部屋に出入りした奴はいないか?」
「先ほどアルベルト様が。」
「ティムが!?」
「はい」
まさか、部屋にいたのがチコさんだと知っていて、捕まえたのか…?
「誰も部屋に入れるなと言っておいただろう!何故ティムの入室を許可したんだ!」
「申し訳ございません!」
「ティムがこの部屋から出ていった時、老婆を連れていなかったか?」
「いいえ。」
「なら、部屋に入る前には持っていなかった物を持っていたとか。」
「いえ、何も持っていませんでした。」
だったら、チコさんはどこへ行った。
魔法で消えたのか?
いや、そんなものは使えないはずだ。それが出来るなら、地下牢に入れられるはずがないんだから。
「…ルーカス、あの男の今日の予定は?職務放棄してルーカスが出かける理由なんて、デュラン絡みだってすぐに予想出来る。なのに、何故あいつは遣いも寄越さなかった?それに、ルーカスが帰ってきても迎えにも出てこないなんて、随分偉くなったもんだな。」
「……」
「お前、何か隠してるだろ?ティムにチコがいる事を知られただけで、何故そんなに焦ってるんだ?おかしいだろ。」
「ティムはチコさんを地下牢に入れていたんだ。いつからなのかは解らないが、俺がそれを知ったのは昨日だ。」
「は?地下牢?チコは何か罪を犯したのか?」
「いや、チコさんは何も。」
「だったら、何故捕まえた?」
「俺にデュランの幻を見せてると言っていた。」
「お前…馬鹿なのか。この城にルーカスがいない状況なら、あの男がチコを追い出すって事くらい想像つくだろ!」
「俺が部屋に入れた客なんだぞ?わざわざ部屋に入って追い出すとは思わないだろ。それに、客が誰なのかティムは知らないはずだ!」
「何温いこと言ってんだ……。無罪の婆さんを地下牢にぶちこんでる時点で、ティムはただのクズじゃねぇか。そんな奴、信用なんて出来るか。」
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