prologue

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 集落を襲われ捕らえられてから恐らく三日目。今日は確か、十五の誕生日だ。国の定める成人とは十六であるが、もう大人だと、集落の男との婚姻が発表される筈だった。誰だか知らないが、予想はつく。集落には近い年齢で成人した未婚の男はおらず、恐らく両親は発言力のある狩猟の得意な男の第二、第三夫人にでもなるように話を進めていたのだろう。もっとも既に集落の人間は生きてると思えず、どうせもうすぐ死ぬのだから関係ないが。  集落を襲われたあの時、私を庇って死んだ友達を、埋めてあげることすらできなかったのが悔やまれる。焼き払われたあの集落にはもう、骨もまともに残っていないかもしれない。友達であった小さな狼の姿を思い出すと、ぽろりと涙が零れ落ちる。  その時、ずる、ずるり、と何かを引きずる音が聞こえた。顔を動かすことができないが、まだここに生きている人間がいたのかとぼんやりと考えたところで、ごめん、と掠れた声が聞こえる。……この声は。 「ミナ、ごめん、ごめんな、俺の、……」  三日前に、村に訪れた冒険者志望の旅の男。私と同じ年齢でありながら冒険者になる為に住んでいた所から飛び出し、ギルドのある街まで行くのだと語っていた彼こそ、魔力の高さから実験体として選ばれてしまった不幸な少年、ユーグリッドだった。
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