最初の街ドルニグ(中編)

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 そうして見晴らしのいい草原に戻ってみれば、その見晴らしのよさが幸いしたのだろう、ホーンボアの死体の周辺にはまだ魔物が群がるような様子もなく、ほっとして荷車の位置まで戻り……その荷車を引っ張り出そうとするような体勢で、弓使いの女性がぐったりと持ち手にもたれかかっているのが見えた。  意識はほとんどないようで、荷車を運ぶことはできずにいたようだ。だがその身体の傷は大分癒えていることから、彼女はポーションを持っていたのだろうと察してほっとする。回復手段についてはこれからの為にもある程度考えておいたほうがいいだろう。 「これはあんたたちの、だよな。こいつ、助けてくれたやつの荷車まで奪おうとしたのか。すまない」 「いや。正しく言えば持っていかざるを得なかった、だな。俺が魔除けをかけたのはこの荷車だし」  女にかけても良かったが、どうせこの状況では死にに行くようなものだ。それなら荷車にかければそれをなんとか持ち運びたい筈で、しかし女の状態では恐らくそう遠くにはいけないだろうと、あとでまとめて回収する為に荷車に魔除けの術を施したらしい。  さらりとそれを伝えたユウは私にシカの血抜きを任せ、エリックさんに尋ねながらさくさくとホーンボアの死体から必要部位最低限を回収する。ちなみに私の仕事は、既に傷ついたシカの死体に出血効果の状態異常をもたらす術を応用した付与術をかけるだけである。  そうしていれば当然普通の状態ではなくとも騒がしさには気づく。荷車にもたれていた女が頬を紅潮させ、人の声に周囲を見回してエリックさんたちを発見すると、生きてたの、と声を震わせきまりの悪そうな様子を見せたが、それでも布で身体を隠しただけのエリックさんのむき出しの肩に、徐々に頬を染めていく。思ったより媚薬の効きがいるようだったが、さすがに躊躇っているようで身を縮こませている。  そんな彼女を無視してユウを手伝っていたエリックさんは、マーナリアさんを安全な位置に横たえ、てきぱきと動いていた。本当なら肉も美味いそうで全部解体したいところだったらしいが、彼らの荷車は壊されたそうだ。第一解体をしていれば夜になるし、そもそも自分たちは倒せなかったのだと受け取ることを辞退したエリックさんを見て、ふうん、と顎に手を当て何かを考え始めたユウのそばに……弓使いの女、エリザがずりずりと近寄って手を伸ばす。 「ねぇ、あん、そんなのいいから、こっちを見て? ね? ほら、今なら私を、あなたの、好きに、していいわ」
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