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「やめろ、エリザ! 悪い、こいつは俺が見張るから」
「やだ、放してよ! あんたよりこの男がいいの。美しく戦う強い男。ねぇ名前を教えて、ぁん、ほら、この体を好きにできるのよ? 抱いていいの、あ、ねぇ」
「エリザ!」
胸を寄せ強調し、その刺激で悶え、ユウに手を伸ばしながら必死で荒い息を押し殺して訴えるエリザだったが、ユウはそちらに目も合わせず無反応のまま黙々と作業し……少しして騒ぐ女性が己の衣類に手をかけようとしたところで、ユウが動いた。直後、どさりと女性の身体が草の上に崩れ落ちる。
「気絶してるだけだが荷車で運んでいいか? 鬱陶しい。ホーンボアとシカが一緒だが」
「……運んでもらえるだけありがたいくらいだ」
「ならこの後のこともついでに黙っててくれ」
言うなり、ユウは異空間収納の指輪に残りのホーンボアの死体を全て詰め込み、唖然としたエリックさんを促して街に戻る為に荷車に荷物を詰め込みだした。
シカや一部解体したホーンボアの肉を専用の革でできた袋に詰め荷車に乗せる。街中でユウの持つ収納魔道具を見せない為、あえて用意したものだ。
しかしさすがにそれとエリザを同じ場所に詰め込むのは躊躇われ、仕方なく荷車の後ろ、箱が傾きすぎて荷物が落ちないようにと長めに伸びていた板部分にその身体を座らせるようにして括りつけて、大分日が傾き始めた草原を急ぎ足で戻ることとなった。マーナリアさんは申し訳ないが、ひたすらエリックさんが抱えて運ぶこととなる。
「あんたも悪かったな、その、あいつがユーグに迫ったりして」
「い、え。その、えっと」
突如話しかけられたことで慌てた私を見てエリックさんは不思議そうな顔をしたが、なんとか取り繕うように「大丈夫です」と言い切って、前へと走りユウの隣に並ぶ。
既にルリは疲れたようで私の腕の中でうとうととしている。やがて空が赤く染まり始めた頃、私たちは漸く、遠くはなかった筈の街の入り口へと辿り着いた。
門前で何があったのかと兵士たちが困惑していたが、パーティーリーダーであるエリックさんが、仲間が二人気を失っていてどうしたものかというところで荷車を持つ私たちに拾ってもらったのだと正確ではないが事情を説明したことで、漸く私たちは街へと入ることができた。
といっても身ぐるみ剥がされた状態のエリックさんは門番の兵に古い服を借りることになっていたし、盗賊に出会ったのではないのかとしつこく聞かれていたようだったが。男性の下着まではぎ取るやばい盗賊でもいるのだろうか。
エリックさんとしてはどうしてもギルド以外で事情を説明したくなかったようで、やや半泣きの必死の説明である。そんな状況の為私とユウも手伝っただけとこの場を抜ける機会を逃し、空が暗くなり始めるまで付き合うこととなったのである。
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