最初の街ドルニグ(中編)

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 朝起きても指通りのいい髪に機嫌よく髪を梳いていると、そんな気に入ってるならまたやってやるよとユウに笑われ、じゃあユウの髪を私がと意気込めば丁重にお断りされと朝から二人で騒ぎつつ、今日もギルドに向かう。  ちなみにユウが上手すぎるだけで、私も最初の頃よりは十分髪を乾かすのは上手くなっている筈なのだと、私の大してない名誉の為に付け加えさせてもらおう。……なんだか少し情けなくなってきた。  昨日の報酬と買い取り金額は銀貨が数枚もらえる程であり、懐はかなり温まった。ほとんど収納に取り込んだとはいえ、持ち込んだ分だけでもホーンボアの頭蓋骨や肉がとても高く売れたのだ。さらにアルラウネに関しては調査終了後恐らく報酬が絡むことになると思われる。ほくほく、というやつである。  多くの冒険者は纏まった金額が手に入った翌日は身体を休めて英気を養うと聞くが、私たちは生活するお金を稼ぐことと同時にランクを上げることも目標であり、稼げたからと言ってすぐ休むつもりはない。一晩しっかり休んで疲れが残っていないことも理由である。  それに今日は薬の補充も予定しており、人気のないところで残りのホーンボアの解体もしなければならない。つまり忙しいのだ。  肩に乗りくちばしで私の髪を軽く摘まんだりして遊んでいるルリに小さい木の実を与えつつ、ユウと並んでギルドへ向かう。  今日はユウの昼食を少し増やしてもいいかもしれない。いや、自分の食事より今はほかのことを優先しようとするユウだから、昨日林で採った果実でいいと言い出すだろうか。そんなことを考えながらギルドに入ると、また複数の視線を感じる。そんなに新人が珍しいだろうか……と思いきや、あいつらだよ、という囁き声が聞こえた。  ……アルラウネのことが広まってる? わざわざ私たちが倒したと言いまわる必要はギルドにない筈だがなぜ、と思ったが、どうやら噂されているのは別の話題のようだ。
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