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前世の記憶があるというのにどう考えても子供な行動を取ってしまった。一人穴を掘る決意をしている私に構わず、ユウは普通にこれから依頼だと答え、休めばいいのにと驚かれる。
「はやくランクを上げておきたくてな」
「まぁ、そうか。お前らの実力ならそうなるよな。でも夜になる前には帰って来ておけよ? 林なんてすぐそこなんだ、少なくともアルラウネを討伐した事実はすぐ証明される」
「わかった。そっちも気をつけろよ、ギルド内が騒がしかったぞ。盗賊が出たんじゃないかとかパーティーメンバーが賊と繋がってたとか言われてる」
「あー……ま、そうなるか」
顔を顰めたエリックだったが、命あるだけましだわという恋人の言葉に頷き、それじゃまた、と手を上げた。
「今日は薬を買いに行くんだろ? いい店だが場所がわかりにくい上に閉まるのが早いんだ、早めに行って購入したほうがいい。できれば孫が店にいればいいんだが」
じゃあなと立ち去るエリックさんたちを見送って、そろりと隣を見上げる。
「あの、ユウ。ごめんね」
「いいって。ほら、薬買いにいくぞ」
促され、慌てて歩き出す。今ウエストポーチに入っている薬は、ルイードさんがアリア師匠に言われて用意した、初心者が持っていても問題ない下級ポーションだ。
私のグリモワールやユウの指輪にも、私たちが森で修行中に狩った獣の素材を売って購入してもらった中級や上級ポーションがあるにはあるのだが。一応そちらは緊急用として普段はないものとして扱うとユウと二人で決めている。
と言うわけで、昨日消費した分の購入が目的だ。
「昨日思ったんだが気絶は怖いよな。気付けの薬とかあるのか?」
「んー、ある筈です。値段は想像つかないけど……」
「下級ポーションを優先して、解毒剤……は高いって聞いたな。確か昨日帰りにエリックが教えてくれた店は大通りから奥に入る、だったか」
ええっと、と言われた道を探し、小道に入る。少しして右に曲がり、さらに左に、と進んで、あってるのか? とユウも自信がなくなり始めた辺りで、小さな店構えの、しかし花の絵が描かれた下げ看板を見つけて、あった、と喜んでハイタッチする。エリックさんから聞いていた通りだ。
民家が多い通りだった。珍しい場所にあるんだな、と周囲を見回しつつ、そっと扉を開ければ、カランコロンとドアベルが鳴る。
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