甘いひととき

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甘いひととき

 その後、駆けつけていた護衛の騎士達によりすぐに王宮へと運ばれたロシュディだが、パトリシアの治癒魔法により傷は綺麗に塞がり刺された痕も残っていなかった。  パトリシアも別の馬車で共に王宮へ運ばれたが、その途中で昏睡状態に陥り、2日間目を覚まさなかった。魔力消費による極度の疲労が原因だった。  王宮医により丁重に治療され、目を覚ます頃には手首の痣も足首の怪我も綺麗に治っていた。  そして1週間後、2人はロシュディの部屋のベッドの上で睦みあっていた。  ギシ、ギシ、と激しくベッドを軋ませ、ロシュディはパトリシアの身体を余すとこなく貪る。 「ロシュディ、さまぁ……あっ、も、ダメ……――!」  パトリシアの腰の下に枕を入れて高くし、逃げようとする足を両腕に抱えるようにして引き寄せているロシュディは容赦なく己の昂りをパトリシアに打ち込む。  鎖骨のあたりまで朱に染まったパトリシアのふやけた泣き顔を見下ろしながら、ロシュディは愛おしげに目を細めた。 「あのとき“なんでもする”って言ったじゃないか。まだまだ付き合ってもらうよ」  言いながら身体を密着させ、パトリシアの濡れた頬を撫でてやってから深い口づけをする。  パトリシアは口内を舌で蹂躙されながら、やはりこれからはロシュディに対して“なんでもする”と軽率に言わないようにしようと誓った。  口づけの間も絶え間なくロシュディの攻めは続き、奥を穿たれるたびに快感が脳へと駆け抜ける。  嫌というほど指や舌で丁寧に解された身体は極限まで敏感になり、パトリシアは訳が分からなくなるほど何度も達していた。 「ロシュディさまっ、ロシュディさま……っ」  唇が離れ、荒い呼吸の合間にうわ言のようにロシュディを呼んで快感に顔を歪ませるパトリシアに興奮が収まらず、ロシュディは既に2度も精を吐き出している。 「好き……、ロシュディさま……すき……っ」  そろそろ解放してあげたいと思いながらも、甘い鳴き声を上げて愛を訴えるパトリシアの可愛らしい姿はロシュディの理性を焼き崩していた。  じゅぶ、じゅぶ、と抽挿するたびにパトリシアの愛液とロシュディの精液とが混じり合い泡立った。  広い部屋の中に漂う淫靡な香りに包まれ、濃厚に絡み合い、情事は空が白み始めるまで続いた。  翌日、パトリシアがベッドから出られたのは昼を大幅に過ぎてからだった。  ロシュディの部屋に用意された食事の席で、パトリシアは不機嫌を表すようにムスッと頬を膨らませていた。 「ごめんね、パトリシア」  昼前に一度目が覚めたのだが、うっかり興奮してしまったロシュディが起き抜けに2度もパトリシアを求めたせいで2度寝してしまい、既に昼というよりは夕方だ。  喘ぎ過ぎて声が掠れる喉を暖かい紅茶で潤し、疲れが抜けきっておらず食欲が湧かないパトリシアのために用意された軽食をつまみながら、申し訳なさそうに眉を下げるロシュディをじとりと横目で一瞥する。  パトリシアが怒っているのは昨夜と今朝とで抱き潰されたことではなく、身体のあちこちに残されたキスマークのせいだ。  起きて腰が立たずフラフラのパトリシアを浴室へ連れていき身体を磨いてくれた侍女達はなにも言わなかったが、無数に残るキスマークに気がついたパトリシアはとても恥ずかしい思いをした。 「次はないですよ」  ムスッとしたまま告げると、向かい側に座って申し訳なさげに大きな身体をを小さくしているロシュディはコクコクと頷いた。 「うん、気をつけるよ」 「“気をつける”じゃなく、やめてください」  鋭く睨めつけるが、ロシュディには効いていないようだ。しおらしい態度をとっているが、その目はこの状況を楽しんでいるかのように嬉しそうな色を浮かべている。  これは全く懲りていないわね。  そう思うも、結局ロシュディの甘い視線に絆されてしまうのがパトリシアだ。  パトリシアよりはやくに目が覚めたロシュディは既に食事を終え、軽食のサンドイッチやスコーンを頬張るパトリシアを微笑ましげに見ながら暖かい紅茶を飲んでいる。
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