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ヘッドフォンで曲を聴いているのか、伴奏もないアカペラの状態で、よく通る澄んだ声で女の子は歌っていた。
踊ろうよさぁダーリン ラストダンスを
暗いニュースが
陽の出とともに町に降る前に
ぼくはベランダの手すりに寄りかかりながらビールをちびちびと飲み、彼女の歌声をずっと聴いていた。とても耳ざわりの良い声だ。
ベンチに腰を下ろした彼女は、金髪に染めたショートヘアだった。毛先が外に跳ねていて、眉の少し上で前髪が切り揃えられている。真っ白な地に写真の風景をプリントしたようなオーバーサイズのTシャツを着ていて、ブルートゥースのヘッドフォンが時折蒼く光る。彼女の足下は、リズムをとって上下していた。
LEDの灯のおかげで、そんな所までぼくは観察する事ができた。
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