たったひとりの非マッチョな俺

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たったひとりの非マッチョな俺

 マッチョって伝染るんだな。  高三になって初めて三年の教室に足を踏み入れた時、そう思わずにいられなかった。  俺こと都築薫流(つづきかおる)が、家が近所だからって理由で通うことにした高校。  最近では珍しい男子校で三年間クラス替えしないって特徴はあるけど、特に大きな問題はなかったと思う。  入学当初は人それぞれの体格。  痩せすぎや太りすぎの奴が少しいた程度。後は平均的。小柄な俺から見れば、平均ってだけでも羨ましい。  ――だったハズなのに。  なんでみんなマッチョになった?  ブレザーの下は今にもボタンを弾いてしまいそうなムッチリ胸筋。  分厚い生地の上からでも分かるムッキリ二の腕。  貧弱体形な俺の倍はありそうなムキョっと首回り。  俺の両隣も、前後も、座るヤツみんなマッチョ。  周りを見渡せばクラス全員、俺以外はマッチョ。  予鈴が鳴って教室に入ってきた立花先生までマッチョ――待って先生。年末までは俺と同じ非マッチョ仲間だったよな!? なんで先生まで伝染ってんだよ……。  まだ春なのに、教室内がムワッと蒸し暑い。 「おはよう。今から出席を取るよー。井上……飯山――」  もう俺以外は誰もツッコまない筋肉異空間の中、変わらない日常が流れていく。  遠い目をしながら俺は思い返す。  どうしてこうなった――?
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