若い叔母と、孤独な甥

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 実際にウィーンに来てからも、彼女は、あまり楽しめなかった。ウィーンの宮廷は、彼女には、堅苦し過ぎた。バイエルンの、自由な雰囲気が、懐かしかった。  だがすぐに、彼女は、自分を諌めた。  「桁外れの成功」  F・カール大公との結婚を、異母姉……ゾフィーの前にオーストリア皇帝に嫁いだ、皇妃カロリーネ・アウグステ……は、こう評している。  オーストリアは、長男の即位が原則だった。  今上帝の長男フェルディナンドは、いつもにこにこ笑っていて、宮廷では愛され、大切にされている。しかし、彼は体が弱く、その政権が、長く続くとは思えなかった。また、結婚も難しいし、子どもをなすことも不可能だろうと、医師団は危惧していた。  つまり、オーストリアの皇帝の位は、次男のF・カール大公……ゾフィーの夫……に転がり込む可能性があるのだ。そして、その次の皇帝は、確実に、F・カールの子……彼女の産む息子が、即位する。  そう。  ゾフィーは、この国(オーストリア)の皇帝を産む為に、はるばるバイエルンから、嫁いできたのだ。  年老いた皇帝の妻となり、子をなすことが望めない異母姉(あね)カロリーネからみたら、異母妹(いもうと)ゾフィーの結婚は、「桁外れの成功」以外の、なにものでもなかろう。
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