1832年、夏

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 (フランツ)・カール(ライヒシュタット公の叔父。母マリー・ルイーゼの弟)が泣き止まない。  おはよう、と言っては泣き、おやすみ、と言っては泣く。  彼は、本当に、がっくりきていた。 「知ってるか、ゾフィー。初めて会った時、あいつが、何と言ったか」  ぐすぐすと鼻をすすりながら、F・カールは、昔の話を始めた。  思い出の中に、逃げ込もうとしているのだ。 「義母(はは)(マリア・ルドヴィカ。皇帝の3人めの妻)に連れられ、僕は、シェーンブルンの庭園を訪れた……」
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