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「でも、あいつ、生意気でさ……」
F・カールは、甥より9歳、年上である。幼児と遊ぶなど、できるものではなかった。
その上、フランスから来たこのチビは、フランス語しか、話そうとしない。服も、フランス製のものにしか、袖を通さない。
「僕はその頃、フランス語の授業に落ちこぼれてたし、」
当然、この二人に、意思の疎通はなかった。フランツは、F・カールに近寄ろうともしない。が、こちらが気になるのだろうか。おもちゃ(それは、F・カールのものだった。突然のパリ脱出で、彼は、自分の玩具を持ち出せなかったのだ)で遊びながら、ちらっ、ちらっ、と、こちらを見ている。
「で、僕は、言ってやったんだ……」
……「僕は、フランス人の子どもとは、遊ばない」
もちろん、ドイツ語を使った。にも、関わらず、甥は反応した。
……「ぎぃゃーーーーーーーーーーーーっ!」
それが、彼からの返事だった。
慌てて駆けつけてきた母に向かって、彼は叫んだ。(こちらは、フランス語だった。意味はあとから、家庭教師に聞いた)
……「ママ! このクソガキを、早くあっちへ連れて行ってよ!」
「生意気なガキでさ。くそナマイキで、でも、かわいいんだ。僕は、彼を、放っておけなかった……」
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