1832年、夏

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 もう、何度目になるだろうか。この話を聞かされるのは。  それでもゾフィーは、辛抱強く夫の話を聞き、最後の方では、笑ってみせもした。  彼女は彼女で、鬱屈していた。  ……フランツ。  最後に彼に会ったのは、7月5日のことだ。  翌6日に、次男マクシミリアンが生まれ、22日早朝に、彼は亡くなった。  ……亡くなるまでの、17日もの間、私は、一度も、彼に会わなかったのだわ……。  年齢の近い叔母として、何より、ウィーン宮廷での同志として、あまりにも、薄情に過ぎるのではなかったか。
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