来夢来人 ーライムライトー

4/10
前へ
/10ページ
次へ
「お(ちゃ)()れてくるね」 来夢(くるむ)はまたトタトタとかいだんを()りていった。 …(あらた)めて部屋(へや)(なか)()る。 (ほか)(おんな)()部屋(へや)()たことないからわからないけど、たぶんかなり(もの)(すく)ないと(おも)う。 (つくえ)本棚(ほんだな)、こたつとベッド、ゴミ(ばこ)があるぐらい。 (おんな)()部屋(へや)にしては可愛(かわい)らしい(もの)(ひと)つもない。 (つくえ)(まえ)(まど)があり、左右(さゆう)薄紫色(うすむらさきいろ)のカーテンがある。椅子(いす)来夢(くるむ)身長(しんちょう)()わせてあるのだろう。 かなり(たか)い。 その(まど)から(そと)()るとなるほど、たしかにぼくが雨宿(あまやど)りしていたバス(てい)()えるな。 来夢(くるむ)()っていたのは(うそ)ではないらしい。 (つくえ)には勉強(べんきょう)していたのかノートと教科書(きょうかしょ)(ひらき)きっぱなしの問題集(もんだいしゅう)()かれていた。 あれ?この問題集(もんだいしゅう)…。 ()になって(のぞ)こうとしたら、階段(かいだん)(しず)かに()がってくる(おと)()こえた。 ぼくはなるべく(しず)かに、素早(すばや)くこたつの(まえ)(すわ)った。 来夢(くるむ)部屋(へや)(はい)ってくる。 お(ぼん)にお(ちゃ)2つとせんべいが2(まい)()かれていた。 せんべいはおじさんのおつまみかな? ずいぶん和風(わふう)だ。 来夢(くるむ)はお(ちゃ)をぼくの(まえ)()いた。 「(あつ)いから、()をつけて」 「あ、ああ」 ありがとう、とは気恥(きは)ずかしくて()えなかった。 なぜか来夢(くるむ)(まえ)では(すこ)(つよ)がっている自分(じぶん)がいる。 お(ちゃ)(くち)をつける。 「わたしね、南野(みなみの)くん(まえ)から()ってたよ」 「え?」 (おも)わずお(ちゃ)()()しそうになる。 告白(こくはく)されているかのような錯覚(さっかく)(おちい)ったのだ。 思春期(ししゅんき)特有(とくゆう)の、あの(なぞ)(おも)()みというやつだ。 「だって、わたしと名前(なまえ)()てるんだもん」 「そう、かな?」 「うん、わたしは来夢(くるむ)南野(みなみの)くんは来人(らいと)。ちょっと()(かた)いじったらライムにライト」 「あ、ああ。そうかもな…」 (きゅう)にドキドキしてきた。 (おな)学年(がくねん)のちょっとかわいい()にそう()われると、どんな(やつ)でもドキドキするだろう。 それでも来夢(くるむ)主導権(しゅどうけん)(にぎ)られるのが(いや)だった。 ぼくは話題(わだい)()えた。 「北大路(きたおおじ)ってさ、いつもテスト満点(まんてん)だよな。どんな勉強(べんきょう)してるんだ?」 「え?わたし?んーと、授業(じゅぎょう)(なら)ったことと教科書(きょうかしょ)、あと問題集(もんだいしゅう)だよ」 問題集(もんだいしゅう)はたぶん、ぼくと(おな)じやつだ。 「へえ」と()いながらこたつから()()がり、問題集(もんだいしゅう)()()った。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加