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よく見ると、篠崎は親しげに泉美の肩に手を回している。肩の上に篠崎の手が見える。いったいどういうことだ。
大きな輪が会場にできていてダンスが始まっている。俺は篠崎たちのところには行かず入口で佇んでいた。泉美も眺めているだけで輪の中に入ろうとしない。
やがて、オクラホマミキサーの音楽が始まった。すると、泉美と篠崎が輪の中に入った。俺も急いで輪の中に入った。入ったというより割り込んだという感じだ。遠くのほうで泉美がターンをしてお辞儀をしているのが見える。
やがて、泉美は俺のすぐ近くまで来た。泉美と目が合う。泉美は楽しそうに笑っている。
そして、とうとう彼女は俺の前に来た。胸がときめく。
気がつくと俺は泉美の手を握っている。まっすぐに俺を見つめる目は輝いていた。泉美は誰よりも、世界中のどの女の子よりも美しかった。純白のドレスでダンスを踊る泉美はまさにジュリエットだった。最後に深々とお辞儀をした。両手でスカートをつまみ、膝を折り曲げて俺に向かってお辞儀をしたのだ。
笑顔の泉美はなんて可愛いらしかったことか。俺は自分のダンスなんかそっちのけで、泉美に釘付けだったんだ。
「宮西先輩って、すごく背が高いのね」
彼女は確かにそう言った。それが、そのとき泉美が発した俺に対する言葉だった。
「バスケ部にしつこく誘われた……」
泉美はおかしそうに笑った。
やがてマイムマイムが終わり、再びオクラホマミキサーが始まった。俺は彼女がまわってくるのを、ぎこちなく踊りながら待った。踊りながら俺の視線はずっと泉美を追っていた。彼女のまっすぐに伸びた背筋、揺れる黒髪、笑顔、何もかも泉美は本当にきれいだった。
そして、気づいたら泉美は俺の前にいた。奇跡はこのときに起きた。ダンスの最中に、なんと泉美は俺にこう言ったんだ。
「抜け出さない?」
言葉通り、俺たちは会場を抜け出した。抜け出してバスに飛び乗ったんだ。バスは繁華街に向かった。
俺たちの服装は目立った。俺は坊主頭に、親父の黒いスーツに蝶ネクタイ、泉美はドレス姿だった。だからバスの乗客たちは一斉に俺たちを見た。
それはまるで映画のワンシーンみたいだった。俺はおかしくなって座席に座ると笑い出したんだ。
六月二十六日
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