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 「佐藤さんさー、困るんだよねー」  「すいませんでした・・・」  「休むんならさー、ちゃんと連絡してくれないとー。社会人として常識だよー?」  「すいませんでした・・・」  翌日、女もとい佐藤は課長からネチネチ説教を受けていた。本人も悪かったと思っているから粛々と受け止めている。  でも頭の中では課長への悪口が飛び交っている。  デスクに向かいキーボードを打っていると、あの刺青が頭を過る。佐藤は手元にあった付箋にボールペンを走らせる。  脳裏に焼き付いた龍を思い出しながら。  黒のボールペンを小気味良く走らせていると、背後に気配を感じた。振り返ろうとすると課長が顔を横に寄せてきた。  「・・・佐藤さん、さっきはごめんねぇ」  「・・・いえ」  「僕もさぁ、立場上ああ言うしかないからさぁ。怖がらせちゃったよねぇ?」  「・・・いえ」  「お詫びと言っちゃなんだけど・・・良かったら今日夕食でもどう・・・?」  背筋に悪寒が走る。  しかし佐藤は努めて静かに返す。  「・・・私は怒られて仕方ない事をしましたので、大丈夫です。課長が心を痛める事はありません」  そう言った直後、目の前のデスクトップを顔面に叩き付けてやりたかった。  なけなしの良心で自分の腕を強く握る。持っていたボールペンが手から滑り落ちる。  佐藤は、なんで自分はこんな事しているんだろうと思いながら付箋をぐしゃぐしゃにして捨てた。
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