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生まれたばかりのハレは目の前に咲いている小さな花をずっと見ていました。
小さな花びらが5枚。
うすいピンク色。
「なにを見ているの?」
ハレと一緒に生まれたモモが言いました。
「お花だよ。とってもカワイイんだ。モモも見てごらん」
ハレに言われるまま、モモはピンク色の花を見下ろします。そしてモモは花びらを1枚ぱくりと口に入れました。
「ああ! モモが食べちゃった」
悲しくてピィピィ泣きはじめたハレの所にママがやってきます。
「まあ、そんなに泣いてどうしたのハレ?」
「モモがお花を食べたんだ」
「ママ、違うの! ハレがカワイイって言うから美味しいのかと思って……」
「食べてみて美味しかった?」
「ぜんぜん」
くちばしをとがらせるモモを見てママは微笑みました。そして燃えるような美しい赤色の羽をバサリと広げてハレとモモをその羽で包みます。
「ねえママ?」
「なあにモモ?」
ママの温かい羽の中から灰茶色の顔をのぞかせてモモがたずねます。
「どうしてママはこんなにキレイな色の羽なの? わたしとハレってばホコリと泥にまみれたのかしら、って思うような色をしているわ?」
「そうね、あなたたちはまだ『ヒナ』だから」
ヒナ、とハレがつぶやいて首をかしげます。
「子どもということよ。オトナになる時にあなたたちは自分の色を決めるのよ」
「自分で色を決めれるの?」
「そうよ。好きな色を選べるの」
「好きな色?」
「ええ。自分がどんな色が好きか『ヒナ』の間にたくさんたくさん考えるといいわ」
ママの話しを聞いてハレとモモは目を見合わせました。
「それ、すっごく楽しそう!」
「とってもワクワクしちゃう!」
ハレとモモはママの赤い羽から飛び出て、ママの周りをよちよち楽しそうに歩きました。
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