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「庵司っ!庵司ってば!今日面接って言ってなかった?ねぇっ!ねぇってば!」
『…っせぇ〜なぁ…』
白髪に近いブリーチされた髪が布団の中から少しだけ見える。
布団を掴んで揺する俺に大層不満そうな声で返事をして、結局そこから出て来なかった。
『…何…お前、今日仕事は?』
ベッドから届く距離に置かれた小さなテーブル。そこに置かれた煙草をグシャっと握って引き寄せる庵司。
「休みだよ…」
『ふぅん…』
庵司は物臭な言い方で呟き、ベッドから裸の上半身を起こして煙草に火を付けた。
「面接…時間過ぎたよ…」
洗濯物を畳みながら小さな声で呟くとベッドから手が伸びて来た。
「ちょっ苦しいよ」
首に巻きついて来た腕は言う事を聞く気も無く俺の身体をベッドの中に引き入れた。
『雪乃…腹減った』
後ろから羽交い締めにされながら首筋に熱い舌が這う。
「んっ!庵司っ」
『おまえじゃ腹一杯になんねぇな』
クスクス笑い、指先に煙草を挟んだままの危ない抱擁に俺は身を捩った。
「煙草っ!灰が落ちるよっ…」
『…落ちたら掃除しろよ。綺麗なシーツで抱かれたいならな』
グルンと身体が反転させられて、ベッドに組み敷かれた。
頭の上で止められた手首が痛い。
顔を顰めると、庵司は嬉しそうに舌舐めずりして見せた。
『雪乃…俺が好きか?』
身体が熱く昂るのを感じていた。
こうして触れて貰うのは、実のところ一週間ぶりで、俺は膨らむ下半身を制御出来ないでいた。
俺は
この自堕落な男、一宮庵司(イチミヤアンジ)を
愛している。
それはとても
最悪な程に…
戻れない程に…
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