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1 怪盗じゃない怪盗、何を盗む?
『予告状:敵か味方かわからなくなって、みんながパニックになるスポーツってなーんだ?』
「しっかり警備しろ! どこから怪盗が現れるか、わからんぞ!」
大人の男が張り上げる声に、息をつめてじっとする。
壁にかかっている時計をみると、夜の八時を回っていた。
今いる場所は、おれ、神木志音が通う小学校の体育館のキャットウォーク。
なんでそんなところにいるかって?
なぜなら、ミッションを実行している最中だからだ。
視線を下に向けると、そこには黒い制服を着た大人が何人もウロウロしていた。
警官だ。
「こんな子どもだましな予告状を送ってくるなんて、ふざけてるわ!」
にししっ……怒ってる怒ってる。
甲高い声で叫び、チェック柄のケープをひるがえしたのは大泉愛菜だ。
少女探偵と呼ばれている愛菜は、おれが出した予告状をにぎりしめ、ぷるぷるとふるえている。
「愛菜、予告状の答えはあってるんだろうな?」
あ、あれは大泉刑事だ。
愛菜のお父さんで、パーマヘアとトレンチコートがトレードマークの刑事さん。
今日も今日とて、おれたちを狙っている。
「パパ、あってるも何もカンタンすぎよ。予告状にわざわざ盗むものを書くんだったら、もっとまともなものを書いてきてほしいわ」
「だったら、答えは?」
「答えはドッチボール。どっち? ってことでしょ。ドッチボールは体育館の倉庫にあるし、ここで警備をしてたら間違いないわ」
ピンポーン! 正解!
って、やっぱりカンタンだったか。
たははー、とおれは首の後ろに手をやった。
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