2 双子は小学4年生

11/12
前へ
/89ページ
次へ
 手島はクラスでちょっとしたボス格のヤツだ。  すぐにマウントをとってこようとするんだ。  だから、おれは気に入らないことはハッキリ言ってやる。 「はあ? 事実を言っただけだぜ。そんなお前は何点だったんだよ?」 「え」  一瞬うろたえてしまったおれの手元から、手島はすっとテスト用紙を抜き取った。 「神木、高野よりも点数悪いじゃん! ヤバイの通り越して、ドン引き!」  手島たちはたちまちげらげらと笑い出した。  くっそ、言い返したいけど、言い返せない。 「まぁ、神木はテストの点数悪くても、親いないし、叱られなくていいよな。うらやましいぜ!」  手島がニヤニヤしながら言うと、取り巻き立ちもいいよなー、と同調する。 「今、親のことなんて関係ないだろ!」  おれはぎゅっと拳を握り締めた。  おれの両親はいない。  父さんは幼いころに母さんと離婚したからいない。  母さんはおれたちが小学三年生の時に事件があってから、一緒に暮らせなくなった。  五朗のおじさんが保護者だけど……おれの家族は、怜音ただ一人だ。 「そこ、何さわいでるの!? 席にもどりなさい」  テストを返却し終わったのか、広瀬先生がおれたちのところまで来て、注意をした。 「すみませーん」  適当にあやまったのは手島と取り巻きたちで、それぞれが自分の席に戻った。
/89ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加