1 怪盗じゃない怪盗、何を盗む?

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 いつも警察に送る予告状には、なぞなぞを書いている。  なぞなぞ、って考えるのがむずかしいんだよなー。  一応、おれだってがんばるんだけどさ。  なぞなぞを作っている時はいつも、双子の兄である、神木怜音(かみきれおん)がツッコミをいれてきて……、 『志音、志音。応答せよ』  あ、この声は……。  おれの名前を呼ぶ声が、頭に直接ひびいた。  その声に応えるために、意識を集中する。 『こちら志音。怜音、どうだ? うまくいった?』 『もちろん。無事に盗み出せたぞ、ドッチボール』 『お、さすが怜音!』  おれは心の中で、手をたたいてよろこんだ。  双子の兄である怜音とは、テレパシーが使える。  双子特有の能力ってヤツ。  だから、インカムがいらないし、通信傍受の心配もないから便利なんだ。 『警官たちは、今どうしてるんだ?』 『みんな体育館にいるよ。倉庫にまだドッチボールがあると思ってるみたいだ』 『マジか。オレが床下の換気口から入って、とっくに盗み出してるっての。志音、警官の誘導ありがとな』 『どういたしまして』  おれたちの役割は決まっている。  おれがおとりになって、警官を誘導する役。  怜音が盗み出す役だ。 『さてと、帰るか。だから志音、その場から静かに……』 『じゃあ、おれ、警察のみなさんにあいさつしてくるな』 『は? おい、ヤメロ! 毎回、毎回余計なことだって、何度言ったら……』  小言が飛んできそうだったので、集中を切った。  怜音は時々、ぴーちくぱーちくうるさいんだよな。  あいさつはコミュニケーションの基本だ。  さーてと、別れのあいさつをしますか!
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