3 キッズエージェントはラクじゃない

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3 キッズエージェントはラクじゃない

 かきかきかきかき……。 「うーん」  かきかき……。 「むむむ」 「志音、さっきからうるさい。そんなに宿題わかんないのかよ?」 「へ?」  怜音にのぞきこまれて、ふと我に返った。  そうだった。  宿題してたんだ。  おれたち双子は学校から家に帰ってきた。  いつも通り、リビングダイニングルームにある、ダイニングテーブルで宿題をしていた。 「うげっ。お前の算数ドリル、すげーことになってんぞ」 「え? うわわぁ!」  やっちまった!  自分の算数ドリルを見ると、文字を書きまくっていた。  え、いつの間に!?  おれ、無意識のうちに書いちゃってるよ!  国語の宿題かよっ。 「なになに、『見返し大作戦! 運動、長いから×。勉強、もしかしたら早い?』って、なんだコレ?」  怜音はおれが書いた文字を読み、首をかしげた。 「あ、えっと、おれのクラスの高野がさ」 「高野? メガネをかけた気弱そうなヤツ?」 「優しいヤツって言ってくれ。その高野が『手島を見返したい』って言ってきたんだ」 「見返したい? またなんで?」 「高野、手島より運動とか勉強とかが上手くないから、よくからかわれてるんだ」 「ひでーな」 「おれがいつも止めてたんだけど、高野が今日見返したいって言ってきてんだ。だから、協力するって決めたんだ」 「それで、『見返し大作戦』か」  つんつん、とドリルの文字を指さされ、おれはこくりとうなずいた。
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