3 キッズエージェントはラクじゃない

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「『運動、長いから×』ってなんだよ?」 「高野は運動が苦手だから、教えても時間がかかりそうなんだ」 「じゃあ、勉強のコレは?」 「今度、算数の再テストがあってさ。高野はまじめなヤツだし、勉強をがんばれば、点数が上がるんじゃないかと思って」 「へぇ。志音にしては、まともな答えじゃん」  怜音が目をぱちくりとさせた。 「失礼だな、おれだってちゃんと考えてんの!」 「ごめんごめん」 「それで怜音、お願いがあるんだけど」 「オレに?」 「高野に算数を教えてほしいんだ。怜音、算数が得意だろ? 協力してくんないかな?」  一卵性双生児のおれたちは、顔も体の大きさもそっくりだ。  だけど、性格や得意なことが違う。  おれは運動の方が得意で、怜音は勉強の方が得意。  だったら、怜音がうってつけだと思うんだ。 「いいよ。教える」 「マジで!? やった! ありがとう!」 「ついでに、志音にも教えられるしな」 「は?」  にっこりとおれと同じ顔が笑うが、おれはぴしりと固まった。 「算数のテスト、返ってきたんだろ。一体何点だったんだよ?」 「そ、それは……」 「二人ともー、宿題は終わった?」 「おじさん!」  ちょうどいいところに!  話がそれるチャンスにおれは飛びつく。
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