1人が本棚に入れています
本棚に追加
「警察のみなさーん!!」
「だ、誰だ!?」
視線を一身に浴びたおれは、くるんと宙返りをした。
そして、スタッ、とキャットウォークの手すりに立った。
「パンパカパーン! 神出鬼没で変幻自在、怪盗ノット参上!!」
羽織った黒のジャケットをひるがえし、拳を突き上げ、ポーズを決める。
決まった!
めちゃくちゃ気持ちいい!
「現れたな、怪盗ノット!」
大泉刑事がお決まりのように吠える。
「ふっふっふ、ターゲットのものはいただいた!」
ビシッ、とおれが指さした。
ぽかんとした表情を見せた大泉刑事だったけど、すぐに顔が青ざめた。
「は? そんなはずは……っ」
大泉刑事が慌てて、体育館の倉庫に走った。
ガンッ、と倉庫の扉を、力まかせに開け放った。
「な、ないわ……」
一緒にのぞいた愛菜が、すっからかんとなった倉庫を見て、呆然とした。
そりゃ、とっくに怜音が盗んだからね。
誰にも気づかれずに盗み出すなんて、怜音にはおちゃのこさいさい。
「こんなものを盗んで、何が目的だ!?」
「目的もなにも、これが必要だからいただいたまで」
そう、おれたちにはこれを盗んで、やることがある。
「つ、捕まえろー!」
大泉刑事が叫ぶと、警官たちが一斉に、おれにむかって走り出した。
最初のコメントを投稿しよう!