1 怪盗じゃない怪盗、何を盗む?

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「警察のみなさーん!!」 「だ、誰だ!?」  視線を一身に浴びたおれは、くるんと宙返りをした。  そして、スタッ、とキャットウォークの手すりに立った。 「パンパカパーン! 神出鬼没で変幻自在、怪盗ノット参上!!」  羽織った黒のジャケットをひるがえし、拳を突き上げ、ポーズを決める。  決まった!  めちゃくちゃ気持ちいい! 「現れたな、怪盗ノット!」  大泉刑事がお決まりのように吠える。 「ふっふっふ、ターゲットのものはいただいた!」  ビシッ、とおれが指さした。  ぽかんとした表情を見せた大泉刑事だったけど、すぐに顔が青ざめた。 「は? そんなはずは……っ」  大泉刑事が慌てて、体育館の倉庫に走った。  ガンッ、と倉庫の扉を、力まかせに開け放った。 「な、ないわ……」  一緒にのぞいた愛菜が、すっからかんとなった倉庫を見て、呆然とした。  そりゃ、とっくに怜音が盗んだからね。  誰にも気づかれずに盗み出すなんて、怜音にはおちゃのこさいさい。 「こんなものを盗んで、何が目的だ!?」 「目的もなにも、これが必要だからいただいたまで」  そう、おれたちにはこれを盗んで、やることがある。 「つ、捕まえろー!」  大泉刑事が叫ぶと、警官たちが一斉に、おれにむかって走り出した。
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