4 双子、ケンカする

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「怜音くん、すごい! こんなコツがあったんだね!」  わからなかった問題のコツに、夢人が感動した。 「まあな。ほかの問題も解いてみろよ」  怜音に促されて、ほかの問題にとりかかった。  やる気にスイッチが入った夢人が、問題をすいすい解いていく。  夢人は学校にいるときは、こんなに早く問題を解いていない。  コツがわかったからって、なんでそんなに早く解けるんだよ。  怜音のおかげか。  ……なんか、もやもやする。 「怜音くん、宿題終わったよ!」 「お疲れ、夢人」  おれが半分ほど宿題を済んだところで、夢人は全部終わっていた。 「最初にコツを教えてもらったから、すいすい解けたよ」 「それはよかった」 「怜音くん、ありがとう!」 「どういたしまして」  夢人がにこにこ笑顔でお礼を言うと、めずらしく怜音が照れた表情を見せた。 「ぼく、あっという間に宿題ができたのって初めてだ!」 「これからは早く終わるんじゃねーの」  おれ、結局夢人の役に立たなかったな。  ……協力するって決めてたのに。  怜音にお願いしたのはおれなんだけど……、  面白く、ないな。 「怜音くん、ホントに算数が得意なんだね!」 「コツがわかればなんとかなるって」  怜音をほめる夢人の声に、イライラする。  どうせ、おれは算数が苦手だよ。 「それに教え方も上手だね!」 「そんなことねーよ」  怜音は素直じゃないから茶化すけど、まんざらでもない表情をしていた。  なんかそういうヨユーのあるような態度、すげームカつく。 「怜音くんのおかげで、次のテストでいい点が取れそう!」 「手島を見返してやれよな」 「うん。ぼく、がんばるよ!」 「いいよなー、コツがつかめるヤツは」  気がついたら声が出ていた。
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