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「は?」
「コツさえつかめれば、なんでも解けるんだろ?」
「なんでもなわけねーだろ」
「怜音はラクしてるよーなもんだよな」
「志音くん……?」
夢人が戸惑っているけど、おれは止まれない。
怜音の声が低くなった。
「ラクなんかしてねーよ。オレはコツをつかもうと工夫してんだよ。いつも宿題をテキトーに終わらせてラクしてんのは、志音だろ!?」
「ラクなんかしてないし! おれはいつも一生懸命やってる。いつも真剣にわかんないことに悩んでるんだ!」
「悩む前に聞けよ! そんなことしてるから、いつも低い点数取るんだろ! 母さんが泣くぞ!」
「怜音はいいよな。同じ双子でも、母さんに似てるから算数が得意で! ずるいよな!」
母さんの話を出してくるなんて卑怯だ。
おれは母さんに似じゃない。
覚えていない父さんに似ているらしい。
おれだって怜音みたいに、母さんに似ているところが欲しかったのに。
おれがぎっとにらむと、負けじとにらみ返してきた。
「し、志音くんも怜音くんも、落ち着いて……」
「ど~お? 三人とも勉強は終わった? そろそろおやつにしようかって……アレ?」
能天気にこの部屋に入ってきた五朗のおじさんが、目をぱちくりさせた。
「どうした? この空気悪い感じ……?」
「えっと、その……」
あわあわしながら答えている夢人に、おれは声をかけていた。
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