4 双子、ケンカする

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「おじさん、宿題終わったよ。夢人、送っていくよ」  おれはすくっと立ち上がった。  五朗のおじさんのそばをすっと抜けて、玄関へむかう。  夢人が戸惑いながらついてきてくれた。  それを悪いと思ったけど……。  こんな家に、いたくなかった。  自宅直通のエレベーターに乗った後、マンションのエントランスを出て、夢人の家にむかって歩く。  夕日がきれいな時間帯で、周りを赤く照らしていた。  無言で歩いていると、おずおずと夢人が話しかけてきた。 「志音くん、今日はありがとう。宿題終わったし、わかったこともいっぱいあったよ」 「……おう、よかったな」 「あのさ……ケンカさせちゃったの、ぼく、だよね。ぼくが家に行かなかったら……」  半歩だけ後ろを歩く夢人が、ぽつりと言った。 「……ちがう、夢人のせいじゃない。おれらはよくケンカしてるから、気にすんなよ」  ごめんな、と言うと、夢人がさびしそうに笑った。 「ぼく、双子のきみたちに憧れてるんだよ」 「あ、憧れてる……? おれたちに?」 「うん。アツい志音くんとクールな怜音くん。二人がいれば最強だよね」  そんなことは言われたことがなくて、おれはぶわわと顔が熱くなった。 「だから、二人がケンカしてるのはかなしい。だから、仲直りしてほしいんだ」  夢人にじっと見られて、落ち着かなくなる。  でも、友達に言われたら仕方ない。  しぶしぶだけど……おれはこくりとうなずいた。
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