5 ミッション開始

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「ドリルです」 「ドリル、ですか」 「はい。国語にはドリルがありますが、道徳にはありません。それから、穴を開ける工具と言えば、ドリルです。閉まりません」 「なるほど」 「ただ、どの教科のドリルなのか、何年生のドリルなのかはわかりません」  愛菜は顔をしかめた。 「じゃあ、どうやって警備をするんですか?」  教頭先生の疑問に答えたのは、大泉刑事だった。 「怪盗ノットが狙っているものはわかったので、職員室をメインに警備します。教室にある可能性もあるので、校舎の各階に警官を配置して、対応できるようにしています」 「そうですか。前回のように失敗しないといいですがね。私は職員室の隣にある事務室にいますので、何かあれば声をかけてください」  教頭先生が去っていくと、大泉刑事がぽりぽりと頭をかいた。 「うーん、手厳しい」 「パパ、仕方ないわ。本当のことだもん。結果を出すしかないわ」 「愛菜、大人だな……! パパは愛菜の成長に感動したよ!」 「は、恥ずかしいからやめてよっ」  「いやいや、これこそ本当のことだぞ。しかし、前回の予告状の難易度が違うもんだな」 「前回とは別の人が予告状を作ったんじゃないかしら。目的のものはドリルってわかるけど、具体的には言ってない。計算高い人が作ったように思うわ」  正解だよ。  前回はカンタンで悪かったな。  そんなにわかるもんなのかよ。  今回の予告状は、怜音がいつのまにか作って、警察に送っていた。 「とにかく、いつ怪盗ノットが現れるかわからないから、しっかり警備してね」 「パパにまかせろ」  大泉親子がうなずき合った。  そんな親子を見届けると、おれはさっそく仕事にとりかかることにした。
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