1 怪盗じゃない怪盗、何を盗む?

4/7
前へ
/89ページ
次へ
「カンタンには捕まんないよ」  おれは天井にむかって、七つ道具の一つであるワイヤーロープをビュンと投げた。  先端にステンレス製のフックがついたロープは、鉄梁にシュルシュルと巻きついた。 「あ~、ああ~~っ!」  やっぱりここは、ターザン風でしょっ。  叫びながらロープにしがみつき、足を伸ばして、思いっきり警官にむかって滑空した。 「うわあああ!!」  ドガッ、ガンッ、ドンッ!  おれがバカ正直にむかってきたもんだから、身構えてなかった警官たちは、おれの蹴りをくらって叫んだ。  面白いくらいドスンドスン、と尻もちをつくなんて、油断しすぎ!  ロープをしゅるりと回収していると、 「逮捕だ、怪盗ノット!」  怒鳴りながら、おれの背後を取った大きな体の警官が、おれの両肩をぐっとつかんだ。  痛ぇな、このバカ力っ。  おれはぐぐっと両手を近づける。  両手首にあるスイッチを、ピコンと押した。  グン、と空気が震えると、エネルギーがチャージされ、おれの体が熱くなる。 「な、なんだ、熱い!?」  びっくりした警官の腕を取り、背中を使って、思いっきり投げ飛ばした。 「一本背負いだ!」  ドターンッ!  警官の体は宙を浮き、体育館の床に見事に転がった。  一本! 決まったっ。  なんで小学生のおれが、大きな体の大人を投げ飛ばせたかって?  なぜなら、七つ道具の一つであるパワードスーツを身に着けているから!  パワードスーツは、おれの筋力を二倍にも三倍にもして、大人と対等にやり合えるようになるんだ。  さてと、逃げなきゃなっ。
/89ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加