5 ミッション開始

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 鍵のかかった扉の前に立った。  今度は、パワードスーツの両手首にあるスイッチをピコンと押した。 「いっけーーーー!」  固く閉じた扉を思いっきり押せば、めりめりと鳴った後、ドン、と扉が開いた。  扉をくぐると、だだっ広い空間が広がる。  広い屋上は、月明りに照らされていた。 「もう逃げられないわよ、怪盗ノット!」  声をかけられ、振り向いた。  多くの警官たちを押しのけて、愛菜とはーはーと息が切れた大泉刑事が現れた。  ヤベ……。  思ったより早く追いつかれてる。  じりじりと警察が前に進む。  その進んだ分だけ、おれは下がった。  トン、と冷たい感触が伝わった。  屋上のフェンスだ。 「くそ……」 「それ以上は下がれないわ。覚悟しなさい」  愛菜は勝ち誇ったような顔をした。  おれは少しでも逃げたくて、フェンスを越えた。 「お、おい、危ないだろ! こっちへ来い!」  大泉刑事が慌てたように叫ぶ。  おれはニヤッと笑って、後ろへ倒れた。 「あ!」  と、言ったのは誰の声だったのだろう。 「怪盗ノット!!」  おれの体は宙に放り出されて、背中から真っ逆さまに落ちた。  四階分の高さから、重力に引っ張られる。  ……って、落ちてジ・エンドなわけないじゃん!  おれは空を飛べるもんね。  おれはベルトのバックルにある、ホバージェットのスイッチをピコンと押した。  ホバージェットがウイーンとうなり声をあげて……ないっ!?  そんな、まさか!?
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