5 ミッション開始

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 怜音のくぐもった声が肩に響く。  もしかして、泣いてる……? 「志音を、失うかと思った。お前は、たった一人の家族だろ……?」  怜音の言葉に胸がしめつけられる。  背中に手を回して、ぎゅっと抱きしめ返した。 「ごめん……ごめん! 心配かけて」 「バカ、心配かけんな」 「怜音、心配してくれてありがとう」  怜音はたった一人の、大事な家族だ。  大事なヤツを悲しませてしまった。  悲しませたと言えば……、 「それとさ、怜音……」 「……何?」 「怜音、前にしたケンカ……ごめん。おれが悪かった」  怜音から体を離し、おれは頭を下げた。  ずっとあやまりたかった。  怜音はおれに協力してくれただけなのに、理不尽だったよな。  ほんと、ごめん。 「たしかに全面的にお前が悪かったな」 「うっ」 「でもまぁ、これで仲直りな」 「おう」  拳同士を突き合わせて、お互いにニカっと笑った。 「あ、そうだ。怜音、算数ドリルは!?」 「ここにあるよ」  怜音はカプセルバッグを取り出し、ふりふりと振った。 「さすが、怜音! 結局、どこにあったんだよ?」 「この教室。職員室に忍び込んだけどなかったんだ」 「ちゃんと忍び込んでくれたんだ……」 「まぁ、志音が引きつけてくれてたし?」  テレパシーが使えなくても、ケンカして離れていても、やっぱり双子だ。  おれたちは双子の片割れが何をしているのか、なんとなくわかるんだ。  怜音が双子の片割れでよかった。
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