5 ミッション開始

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「志音、帰るか」 「おう」  と、返事をしたのに、あ、と怜音が声を上げた。 「お前のホバージェット、オンにならなかったんだっけ?」 「そうだった」 「見せてみろよ」  おれのベルトのバックルのスイッチを、怜音が何度かカチカチと押す。  うんともすんとも言わない。  今度は長押しをしてみた。  すると、ホバージェットがウイーン、とうなり声を上げた。 「う、動いた! ありがと」 「とりあえず応急処置な」 「五朗のおじさんに教えてもらったのか?」 「ミッションの時は師匠な。そうだ。なんかあった時のためにって。今日、役に立つとは思ってなかったけどな」 「うっ……ごめん。助かりました」 「見つけたぞ、怪盗ノット!」  ガラガラ、と勢いよく教室の扉が開いた。  ドタバタと入ってきたのは、必死な顔をした大泉刑事だった。 「飛び降りたからヤバイと思ったら、ちゃっかり無事だな!?」  あ、そっか。  おれ、飛び降りたように見せたんだった。 「刑事さん、心配かけてごめんな」 「ごめん、と思うなら、逮捕されたらどうだ!?」 「それはごめんな?」 「お前、さっきからごめんばっかな」  隣の怜音がくすくす笑った。 「というわけで、刑事さん。オレら、ミッション完了」 「は?」  大泉刑事がぽかんとした。  そんな刑事さんをよそに、怜音がバックルのスイッチを押し、ホバージェットを起動させた。 「ターゲットのものはいただいたんで」 「おい、ちょっと待て!」 「おれたち帰ります。それではみなさん、ばーいばーい!」  おれたちの体がふわりと浮いて、教室の窓から外へ出た。
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