5 ミッション開始

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 タカのような鋭い視線。  口元をフェイスガードで隠してるから、余計に視線が際立つ。  なんだよ……コイツ……。 「君たち、面白いことをしているな。ただ、盗みはいけないよ?」 「は?」  と思った瞬間、すっと目の前に現れた。 「うわっ!」  おれたちはのけぞりながら後ろへ下がり、屋上へ着地した。 「あぶねーっ」  一瞬で間合いをつめられた。  一体、何者!?  すぐに両手首のパワードスーツのスイッチを入れる。  こっちはキッズエージェントとして、五朗のおじさんに鍛えられてるんだからなっ。  おれは男に対して、熱くなった拳を勢いよく繰り出した。  しかし、すばやい動きで、攻撃はあっさりとかわされる。 「マジかよ!?」  パワードスーツは大人と対等に戦えるように作られてるんだぞ!  おれの動きに合わせて、怜音も反対側から攻撃を仕掛ける。  双子のシンクロ攻撃だ!  息の合ったコンビネーションで、拳と蹴りを何度も打ち込む。 「くっそ!」 「当たれ!」  二人がかりで攻撃しているのに、 なんで一発も当たらないんだよ!? 「これはもらっていこう」 「あ!」  怜音が叫ぶ。  怜音との間合いを一瞬でつめた男は、カプセルバッグを手にしていた。  ウソだろ……。  それは今日のミッションで手に入れた、算数ドリルだぞ……。 「盗みなんてやめて、ガキはさっさと寝るんだな」  夜の闇にまぎれて、男はひらりと去っていった。  その間、おれたちは一歩も動けなかった。  レベルが、違う。  おれたちは男が去る背中を、呆然と見つめていた。
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