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扉に視線を向けると、入ってきたのは教頭先生だった。
「す、すみません!」
ひきつった顔の広瀬先生が、がばりと頭を下げた。
『教頭先生が入ってきた。テレパシーを切るよ』
『わかった』
怜音の返事を聞いて、集中を切った。
「君たちのクラスだけ、算数ドリルが盗まれたことは残念なことです。しかし、騒いでいいわけではないですよ。広瀬先生、生徒たちにあのことは説明したのですか?」
「いえ、まだです……」
「さっさとしなさい」
教頭先生が広瀬先生に、厳しい視線を向けた。
うわぁ、こえー。
広瀬先生、すげーびびってるじゃん。
「えっと、算数ドリルが盗まれてしまったので、これから算数ドリルで勉強することはできません」
「それじゃあ先生、宿題がなくなるってことだよな?」
手島が大声で言うと、クラスのみんなの表情がぱあっと輝いた。
「ホントだ!」
「ラッキー!」
「怪盗ノット、いいことするな!」
お、確かに宿題なくなるじゃん。
やった!
おれ、グッジョブっ。
宿題から解放されて、好きなことできるー!
「静かに!」
教頭先生がぴしゃりというと、しんと静かになった。
広瀬先生が言葉を続けた。
「そのため、予定していた算数の再テストはできません」
あ……そっか。
算数の再テストもなくなるんだ。
ちらりと隣にいる夢人を見ると、眉をへにょんと下げていた。
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