6 新しい算数ドリル

4/13
前へ
/89ページ
次へ
 扉に視線を向けると、入ってきたのは教頭先生だった。 「す、すみません!」  ひきつった顔の広瀬先生が、がばりと頭を下げた。 『教頭先生が入ってきた。テレパシーを切るよ』 『わかった』  怜音の返事を聞いて、集中を切った。 「君たちのクラスだけ、算数ドリルが盗まれたことは残念なことです。しかし、騒いでいいわけではないですよ。広瀬先生、生徒たちにあのことは説明したのですか?」 「いえ、まだです……」 「さっさとしなさい」  教頭先生が広瀬先生に、厳しい視線を向けた。  うわぁ、こえー。  広瀬先生、すげーびびってるじゃん。 「えっと、算数ドリルが盗まれてしまったので、これから算数ドリルで勉強することはできません」 「それじゃあ先生、宿題がなくなるってことだよな?」  手島が大声で言うと、クラスのみんなの表情がぱあっと輝いた。 「ホントだ!」 「ラッキー!」 「怪盗ノット、いいことするな!」  お、確かに宿題なくなるじゃん。  やった!  おれ、グッジョブっ。  宿題から解放されて、好きなことできるー! 「静かに!」  教頭先生がぴしゃりというと、しんと静かになった。  広瀬先生が言葉を続けた。 「そのため、予定していた算数の再テストはできません」  あ……そっか。  算数の再テストもなくなるんだ。  ちらりと隣にいる夢人を見ると、眉をへにょんと下げていた。
/89ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加